側副血行路とは?門脈圧亢進で見られる重要所見と超音波での見方を解説

公開: 更新: 約15分

側副血行路とは、通常の血流経路が通りにくくなったときに、血液が別の経路を通って流れるようになった迂回路のことです。腹部エコーでは、特に門脈圧亢進に関連して確認される重要な所見の一つです。

門脈圧が上昇すると、腸管や脾臓から肝臓へ向かう血液が流れにくくなり、本来目立たない静脈が拡張したり、別の経路へ血流が逃げたりすることがあります。このときに発達する血流の逃げ道が側副血行路です。

この記事では、側副血行路とは何か、門脈圧亢進との関係、腹部エコーで確認したい代表的な部位、カラードプラ・パルスドプラでの見方、記録時の注意点を医療従事者向けにわかりやすく整理します。

「側副血行路って何を意味するの?」「腹部エコーでどこを見ればいいの?」「門脈圧亢進とどう関係するの?」と迷うことはありませんか。

側副血行路は、腹部エコーの初心者にとって少しイメージしづらい所見です。なぜなら、肝臓や胆嚢のように決まった臓器を観察するというより、血流の逃げ道や異常な血管経路を探す必要があるからです。

ただし、側副血行路を理解できると、門脈圧亢進、肝硬変、脾腫、腹水、門脈血流の変化などを関連づけて評価しやすくなります。

この記事では、側副血行路を単なる用語としてではなく、超音波検査でどう見て、どう考えるかまで解説します。

側副血行路とは

側副血行路とは、血液が本来の経路を通りにくくなったときに、別の血管経路を通って流れるようになった迂回路のことです。

腹部領域では、門脈圧亢進によって形成される側副血行路が重要です。

血流の逃げ道として形成される血管経路

側副血行路は、血液が通りにくくなった場所を避けるために発達する血流の逃げ道です。

通常、腸管、脾臓、膵臓などから集まった血液は門脈を通って肝臓へ流れます。しかし、肝硬変などによって肝臓内の血流抵抗が高くなると、門脈内の圧が上がり、血液が肝臓へ流れ込みにくくなります。

その結果、血液は別の経路を通って体循環へ戻ろうとします。このときに発達する経路が、門脈系と体循環系をつなぐ側副血行路です。

門脈圧亢進の基本を先に整理したい方は、門脈圧亢進とは何かを解説した記事も参考になります。

側副血行路は門脈圧亢進の重要なサイン

腹部エコーで側副血行路が疑われる場合、門脈圧亢進の存在を考える必要があります。

門脈圧亢進では、門脈径の拡大、門脈血流速度の低下、血流方向の変化、脾腫、腹水などが見られることがあります。側副血行路は、これらの所見とあわせて評価することで意味を持ちます。

重要なのは、側副血行路だけで病態を断定するのではなく、肝臓の形態、脾臓の大きさ、門脈血流、腹水の有無などを総合的に見ることです。

食道静脈瘤や胃静脈瘤とも関係する

側副血行路の中には、食道や胃の周囲の静脈が拡張するものがあります。

これらは食道静脈瘤や胃静脈瘤と関係し、出血リスクを伴うことがあります。そのため、超音波検査で側副血行路を疑う所見を認めた場合は、単なる血管の拡張として流さず、門脈圧亢進に関連する所見として整理することが大切です。

側副血行路ができるしくみ

側副血行路を理解するには、門脈の血流がどのように変化するかを考える必要があります。

門脈圧が高くなると、門脈系の血液は圧の高い経路を避け、より流れやすい別の経路へ向かいます。

門脈圧が上がると血液が肝臓を通りにくくなる

肝硬変などで肝臓内の血流抵抗が高くなると、門脈から肝臓へ流れる血液が通りにくくなります。

門脈は、腸管や脾臓などから集まった血液を肝臓へ送る重要な血管です。通常であれば、門脈血は肝臓を通過して肝静脈から心臓へ戻ります。

しかし、肝臓内で血流抵抗が高くなると、門脈内の圧が上昇します。この状態が続くと、門脈系の血液は肝臓を通る以外の逃げ道を使うようになります。

本来目立たない血管が拡張する

側副血行路では、本来は細く目立たない血管が拡張し、血流の通り道として機能することがあります。

たとえば、食道周囲、胃周囲、臍周囲、脾腎間などに血流の逃げ道が形成されることがあります。腹部エコーでは、通常とは異なる部位に蛇行した血管構造や拡張した静脈として観察されることがあります。

血流方向の確認が重要になる

側副血行路を評価するときは、血管らしい構造が見えるかどうかだけでなく、血流がどちら向きに流れているかを確認することが重要です。

カラードプラやパルスドプラを使うことで、血流の有無、方向、速度、波形を確認できます。特に、通常とは異なる方向へ流れる血流がある場合、門脈圧亢進に伴う側副血行路を考える手がかりになります。

カラードプラの基本を整理したい方は、カラードプラとは何かを解説した記事も参考になります。

腹部エコーで確認される代表的な側副血行路

側副血行路にはいくつかの代表的な経路があります。

すべてを腹部エコーだけで明確に評価できるわけではありませんが、よく知られるパターンを理解しておくことで、観察時の意識が変わります。

左胃静脈系の側副血行路

左胃静脈系の側副血行路は、食道静脈瘤と関係する重要な経路です。

門脈圧が上昇すると、胃の小弯側や食道周囲へ血流が逃げることがあります。これにより、食道周囲の静脈が拡張し、食道静脈瘤の形成につながることがあります。

超音波では、胃周囲や肝左葉周辺で拡張した血管構造を疑う場合があります。ただし、食道静脈瘤そのものの評価は内視鏡が中心となるため、腹部エコーでは門脈圧亢進を示す関連所見として考えます。

短胃静脈・胃腎シャント

胃周囲から腎静脈方向へ流れる側副血行路が発達することがあります。

胃静脈瘤や胃腎シャントに関連する経路では、脾門部周囲や左腎静脈周辺に拡張した血管が確認されることがあります。腹部エコーでは、脾臓周囲や左腎周囲の血管構造を意識して観察することが大切です。

傍臍静脈の再開通

門脈圧亢進では、肝円索に沿って傍臍静脈が再開通することがあります。

腹部エコーでは、肝左葉前方や肝円索周囲に管状構造を認め、カラードプラで血流が確認されることがあります。通常は目立たない部位に血流が見える場合、側副血行路の一つとして考えます。

脾腎シャント

脾静脈系から左腎静脈方向へ向かう血流経路が発達することがあります。

脾腎シャントでは、脾門部周囲や左腎周囲に蛇行した血管構造が見られることがあります。脾腫を伴う場合もあるため、脾臓の大きさや脾門部の血管もあわせて観察します。

脾腫との関係を整理したい方は、脾腫とは何かを解説した記事も参考になります。

代表的な側副血行路の例

  • 左胃静脈系の側副血行路
  • 食道周囲静脈の拡張
  • 胃周囲静脈の拡張
  • 傍臍静脈の再開通
  • 脾腎シャント
  • 胃腎シャント
  • 直腸静脈叢を介する経路

側副血行路を超音波で見るときのポイント

側副血行路を超音波で評価する際は、Bモードだけでなく、カラードプラやパルスドプラを組み合わせることが重要です。

血管らしい構造が見えても、それが何の血管なのか、どちら向きに流れているのかを確認しなければ、評価として不十分になることがあります。

Bモードで蛇行した血管構造を探す

側副血行路は、通常とは異なる部位に見える蛇行した管状構造として疑われることがあります。

肝門部、脾門部、胃周囲、肝円索周囲、左腎周囲などで、通常より目立つ血管構造がないかを確認します。

Bモードでは、管状構造、蛇行、拡張、周囲臓器との位置関係を観察します。ただし、Bモードだけでは血管かどうか判断しにくい場合もあるため、カラードプラで血流を確認することが大切です。

カラードプラで血流の有無と方向を確認する

カラードプラでは、その構造内に血流があるかを確認します。

血流が確認できた場合は、周囲の血管との連続性や、流れの方向を意識します。通常の門脈血流と異なる方向へ流れている場合、側副血行路を考える手がかりになります。

ただし、カラードプラは角度や設定によって見え方が変わります。流速レンジ、ゲイン、フィルタ設定が不適切だと、血流が見えにくくなったり、ノイズと混同したりすることがあります。

パルスドプラで波形と方向を確認する

パルスドプラを使うと、血流方向や速度、波形をより具体的に確認できます。

門脈系の血流では、流れの方向が評価の重要なポイントになることがあります。サンプルボリュームを血管内に正しく置き、血流方向とドプラ角度を意識して記録します。

パルスドプラ法の基本を確認したい方は、パルスドプラ法とは何かを解説した記事もあわせて読むと理解しやすくなります。

側副血行路を評価するときの確認ポイント

  • 通常とは異なる部位に蛇行した血管構造がないか
  • カラードプラで血流が確認できるか
  • 血流方向が通常の門脈血流とどう違うか
  • 門脈径や門脈血流速度に変化がないか
  • 脾腫や腹水を伴っていないか
  • 肝表面の不整や肝実質の変化がないか
  • 過去検査と比べて変化があるか
  • 描出困難な場合、その理由を記録しているか

側副血行路と一緒に確認したい関連所見

側副血行路を見たときは、その所見だけを単独で評価するのではなく、門脈圧亢進に関連する他の所見も確認します。

複数の所見がそろうことで、病態の理解がしやすくなります。

門脈径の拡大

門脈圧亢進では、門脈径が拡大して見えることがあります。

門脈径は、測定部位や呼吸状態、体格によって変わるため、数値だけで判断するのではなく、血流速度や他の所見とあわせて考えることが大切です。

門脈血流の低下や方向変化

門脈圧亢進では、門脈血流速度が低下したり、血流方向が変化したりすることがあります。

通常は肝臓へ向かう方向に流れる門脈血が、状態によっては流れにくくなったり、逆方向の成分が目立ったりすることがあります。カラードプラやパルスドプラで確認する際は、流速だけでなく方向にも注意します。

脾腫

門脈圧亢進では、脾臓が大きくなることがあります。

側副血行路を疑う所見がある場合、脾臓の大きさや脾門部周囲の血管拡張も確認します。脾腫がある場合は、門脈圧亢進を考えるうえで重要な関連所見になります。

腹水

腹水は、門脈圧亢進や肝機能低下などと関連して見られることがあります。

腹部エコーでは、肝周囲、脾周囲、モリソン窩、骨盤腔などを確認し、腹水の有無を観察します。少量腹水は見落としやすいため、観察部位を決めて確認することが大切です。

肝表面や肝実質の変化

肝硬変が背景にある場合、肝表面の不整、肝辺縁の鈍化、肝実質エコーパターンの変化などを認めることがあります。

側副血行路、脾腫、腹水、肝形態変化をセットで見ることで、慢性肝疾患や門脈圧亢進の評価がしやすくなります。

腹部エコーの観察手順に不安がある方は、腹部エコーの練習方法を解説した記事も参考になります。

側副血行路を記録するときの注意点

側副血行路を疑う所見を見つけた場合は、画像、血流、位置関係、関連所見を後から確認できる形で残すことが大切です。

血管構造だけを保存しても、どの部位で、どの方向に流れていたのかがわからないと、所見として伝わりにくくなります。

部位がわかる画像を残す

側副血行路を記録するときは、どの部位にある血管なのかがわかる画像を残すことが重要です。

肝門部、脾門部、肝円索周囲、胃周囲、左腎周囲など、観察した部位がわかるように画像を保存します。必要に応じて、周囲臓器やランドマークが入る画像も残します。

Bモードとカラードプラをセットで残す

Bモードだけでは血管構造かどうか判断しにくいことがあります。

そのため、管状構造が見えた場合は、Bモード画像とカラードプラ画像をセットで残すと、血流を伴う構造であることを説明しやすくなります。

血流方向がわかる記録を残す

側副血行路では、血流方向の評価が重要です。

カラードプラの色だけで判断せず、プローブ方向やカラーマップを確認したうえで、必要に応じてパルスドプラ波形も保存します。血流方向が門脈圧亢進を示す手がかりになることがあるため、記録時には方向を意識します。

関連所見もレポートに含める

側副血行路を疑う所見がある場合は、門脈径、門脈血流、脾腫、腹水、肝形態変化などをあわせて記録します。

レポートでは、「側副血行路を疑う血管構造を認める」だけでなく、どの部位にあり、どのような血流を示し、他にどの所見を伴うかを整理すると伝わりやすくなります。

側副血行路を記録するときに残したい内容

  • 観察部位がわかるBモード画像
  • 血流を示すカラードプラ画像
  • 必要に応じたパルスドプラ波形
  • 血流方向の確認
  • 門脈径や門脈血流の記録
  • 脾腫、腹水、肝形態変化の有無
  • 過去検査との比較
  • 描出困難や評価制限がある場合の記載

側副血行路の評価で初心者が注意したいこと

側副血行路は、腹部エコー初心者が見落としやすい所見の一つです。

理由は、観察する場所が一つに決まっているわけではなく、血管の走行や血流方向を理解しながら評価する必要があるからです。

血管らしく見えてもすぐに断定しない

腹部エコーで管状構造が見えても、すぐに側副血行路と断定しないことが大切です。

周囲の正常血管、胆管、消化管、リンパ節周囲の構造などと見分ける必要があります。Bモード、カラードプラ、パルスドプラ、周囲臓器との位置関係をあわせて確認します。

カラードプラ設定に注意する

カラードプラの設定が適切でないと、血流が見えにくくなったり、ノイズが血流のように見えたりすることがあります。

流速レンジ、ゲイン、壁フィルタ、カラーボックスの位置や大きさを調整し、血流を確認しやすい条件を作ることが重要です。

関連所見を見ずに終わらない

側副血行路を疑う所見を認めた場合、その血管だけを見て終わらないようにします。

門脈、脾臓、腹水、肝形態、肝実質、脾門部周囲の血管などをあわせて確認することで、所見の意味を整理しやすくなります。

実技で確認しないと理解しにくい

側副血行路は、教科書で用語を読むだけでは理解しにくい所見です。

実際のエコー画像で、どの位置に血管が見え、カラードプラでどのように血流が表示され、他の所見とどうつながるのかを確認することで、理解が深まりやすくなります。

側副血行路についてよくある疑問

ここでは、側副血行路を学ぶときによくある疑問を整理します。

側副血行路とは簡単に言うと何ですか?

側副血行路とは、本来の血流経路が通りにくくなったときに、血液が別の道を通って流れるようになった迂回路のことです。

腹部領域では、門脈圧亢進によって門脈系の血液が肝臓を通りにくくなり、食道周囲、胃周囲、臍周囲、脾腎間などに逃げ道が形成されることがあります。

側副血行路はなぜ門脈圧亢進で見られるのですか?

門脈圧が上昇すると、門脈血が肝臓へ流れにくくなり、別の経路へ逃げるためです。

肝硬変などで肝臓内の血流抵抗が高くなると、門脈圧が上昇します。その結果、門脈系と体循環系をつなぐ側副血行路が発達しやすくなります。

側副血行路は超音波で見えますか?

側副血行路は、腹部エコーで確認できる場合があります。

Bモードで蛇行した血管構造を疑い、カラードプラで血流の有無や方向を確認します。必要に応じてパルスドプラで波形を記録し、門脈径、脾腫、腹水などの関連所見もあわせて評価します。

側副血行路を見つけたら何を確認すべきですか?

側副血行路を疑う所見を見つけたら、門脈圧亢進に関連する所見をあわせて確認します。

門脈径、門脈血流速度、血流方向、脾腫、腹水、肝表面不整、肝実質変化、過去画像との比較を確認すると、所見の意味を整理しやすくなります。

側副血行路と静脈瘤は同じですか?

完全に同じ意味ではありませんが、門脈圧亢進に伴う側副血行路の一部として、食道静脈瘤や胃静脈瘤が関係することがあります。

側副血行路は血液の逃げ道全体を指す考え方であり、その経路の一部で静脈が拡張すると静脈瘤として問題になることがあります。静脈瘤の評価は、超音波だけでなく内視鏡など他の検査とあわせて判断されます。

側副血行路は実技で学ぶと理解しやすい

側副血行路は、文章で理解するだけでは現場で見つけにくい所見です。

どの部位に血管が見えやすいのか、カラードプラでどのように血流を確認するのか、門脈圧亢進の他の所見とどう組み合わせて考えるのかは、実際の画像を見ながら学ぶ方が理解しやすくなります。

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この記事の要点整理

  • 側副血行路とは、血液が別の経路を通るようになった迂回路のこと
  • 腹部エコーでは、門脈圧亢進に関連する重要所見として確認される
  • 食道周囲、胃周囲、傍臍静脈、脾腎シャントなどが代表的
  • Bモードだけでなく、カラードプラとパルスドプラで血流を確認する
  • 門脈径、門脈血流、脾腫、腹水、肝形態変化もあわせて評価する
  • 血管構造だけで断定せず、部位、血流方向、関連所見を総合して考える
  • 実技で画像と血流を確認すると、側副血行路の理解が深まりやすい

側副血行路は、門脈圧亢進を理解するうえで重要な所見です。

単に「異常な血管がある」と見るのではなく、なぜその血流が発達しているのか、どの方向へ流れているのか、他にどの所見を伴っているのかを考えることで、腹部エコーの評価力が上がります。

腹部エコーで門脈圧亢進や側副血行路を見落とさないためにも、Bモード、カラードプラ、パルスドプラを組み合わせて、血流と関連所見を丁寧に確認していきましょう。

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