心エコーのEF測定方法|Simpson法のトレースで迷ったときの確認手順

公開: 約11分

「EFを測り直すと、さっきと数値が違う」「Simpson法で、乳頭筋のところをどうトレースすればいいか迷う」

計算式は分かっていても、実際の画像を前にすると手が止まってしまうことはありませんか。どの断面を使い、どのタイミングを選び、どこに線を引くのか。分からないことが重なると、何から確認すればよいかも見えにくくなります。

この記事では、心エコーを学ぶ医療従事者に向けて、2Dの二断面Simpson法によるEF測定を「断面・時相・トレース・結果確認」に分けて整理します。正常値や病気の判断ではなく、計測するときの確認手順に絞ってお伝えします。

最初に押さえたいこと

二断面Simpson法では、心尖部四腔像と心尖部二腔像を用い、拡張末期・収縮末期の左室容積からEFを求めます。数値を直そうとする前に、計測に使った画像とフレーム、トレースを確認しましょう。[1][2]

成人の経胸壁心エコーにおける2D計測の学習用解説です。3D計測や装置固有の自動解析手順とは区別し、実際の検査・報告は勤務先の手順と指導者・医師の確認に従ってください。

心エコーのEFは、2つの左室容積から計算する

EFは駆出率のことです。ここでは左室駆出率(LVEF)を扱います。必要になるのは、拡張末期の左室容積「EDV」と、収縮末期の左室容積「ESV」です。[1]

EF(%)=(EDV − ESV)÷ EDV × 100

例えば、EDVが100mL、ESVが40mLなら、EFは60%です。これは計算方法を理解するための仮の数値で、正常・異常を判断する例ではありません。

計算そのものよりも、EDVとESVを求めるための画像・時相・輪郭を適切に選べているかを確認することが、この先の手順の目的です。EFの意味や解釈から確認したい方は、心エコーのEFとは?駆出率の意味と見方を先に読んでみてください。

手順1|四腔像と二腔像で、左室の心尖部まで描出する

本記事で扱う二断面法では、心尖部四腔像(A4C)と心尖部二腔像(A2C)を使います。四腔像が一枚得られたから計測準備が完了、というわけではありません。[3]

確認したいのは、左室の心尖部が手前で切れたような「短縮像」になっていないかです。短縮した断面では左室容積を小さく見積もることがあります。輪郭を丁寧になぞっても、元の断面が適切でなければ解決しません。[3]

四腔像と二腔像で左室の長さが大きく違うときも、まず描出を見直す手掛かりにします。数字を合わせるために長軸の線を伸ばすのではなく、真の心尖部が見えているかを確認します。[1]

四腔像の描出で止まっている方は、心尖部四腔像の当て方と短縮を防ぐ確認ポイントも参考にしてください。

手順2|拡張末期・収縮末期のフレームを選ぶ

「時相」は、心臓の一周期のどのタイミングか、という意味です。ASEの2019年ガイドラインでは、この計測で拡張末期・収縮末期を選ぶ際、各断面で左室内腔の面積が最大・最小となるフレームを用いるとしています。[2]

まず動画を見てから、計測に使う心拍のフレームを一つずつ確認してください。トレースを直すたびに選ぶフレームも変えてしまうと、数値が変わった理由を切り分けにくくなります。

計測前にそろえる「2断面 × 2時相」
断面 拡張末期 収縮末期
心尖部四腔像(A4C) 拡張末期のフレームを確認 収縮末期のフレームを確認
心尖部二腔像(A2C) 拡張末期のフレームを確認 収縮末期のフレームを確認

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。装置によって計測画面の名称や操作順は異なります。

心拍ごとの変化が大きい場合や、どの心拍を採用すべきか判断できない場合は、自己判断で都合のよい一拍を選ばず、施設の計測手順と指導者の判断を確認してください。

手順3|乳頭筋の凹凸ではなく、心内膜の境界を追う

トレースは、僧帽弁輪の一方から心尖部を通って反対側の弁輪へ進め、弁輪間を直線で結びます。左房側まで大きく囲んだり、心尖部を途中で切り上げたりしていないか確認しましょう。[1]

乳頭筋・肉柱は「トレースする線」と「容積」を分けて考える

ここは、「含める」「除外する」という言葉だけでは混乱しやすい部分です。

本記事が参照するASEの2019年ガイドラインでは、乳頭筋・肉柱の突起を一つずつ回り込むようにはトレースせず、緻密心筋との境界に沿って左室内腔を囲みます。乳頭筋・肉柱は、計測される内腔容積に含める扱いです。[2]

つまり、「乳頭筋をトレースの対象から除く」と「乳頭筋の分を内腔容積から差し引く」は同じ意味ではありません。どの線を引くのか迷ったら、文章だけで覚えず、参照資料の図と実際の画像を指導者と確認してみてください。

この説明は、本記事の2D二断面法についてのものです。ほかの画像検査や解析ソフトへ、そのまま当てはめないでください。

境界が見えないところは、想像で埋めない

線を引く場所が分からないときは、輪郭の描き方だけの問題とは限りません。日本心エコー図学会の手引きでは、心内膜を同定しにくい場合に、ほかの断面も使って確認することが示されています。[1]

描出や設定を見直す段階なのか、追加の評価が必要なのかを、指導者・医師と相談しましょう。装置設定の役割を整理したい場合は、深度・ゲイン・フォーカスなどの画像調整ガイドも確認できます。

手順4|自動計測でも、線と時相を確認してから採用する

自動で輪郭が表示されても、確認作業が不要になるわけではありません。ASEの2019年ガイドラインは、自動追跡の誤りを確認・修正できることや、計測に使った動画を記録することを重視しています。[2]

数値だけを見る前に、心尖部・弁輪・側壁などで線がずれていないか、選択されたフレームは適切かを見直します。修正方法は、使用している装置やソフトの手順に従ってください。

また、EFが想定と違ったからといって、期待する数値になるまで線を動かすことは避けます。採用する理由を画像で説明できるか、という視点で確認しましょう。

EFを測り直すと変わるときは、同じ順番で見直す

以下は、確認の抜けを減らすために本記事で整理したチェック表です。検査の合否判定表ではなく、指導者に相談するときの整理用として使ってください。

数値より先に確認したい4項目
確認する項目 指導者と共有したいこと
断面 四腔像・二腔像のどちらで迷ったか。心尖部の短縮や見えない壁がないか。
時相 同じ動画・同じ心拍・同じフレームで比較しているか。
トレース 心尖部、弁輪、乳頭筋付近など、どの場所で線の引き方が違ったか。
結果と保存 EDV・ESV・EFと、使用した画像・計測方法を一緒に確認できるか。

例えば、学習用の同じ動画でEFが違った場合は、まず使った心拍とフレームをそろえます。それでも違うなら、トレースが異なる場所を一緒に確認します。断面の違う画像を比べる場合は、輪郭の差だけでは判断しません。

これは学習の進め方の例で、特定の受講者や患者さんの事例ではありません。練習には許可された教材・画像を使い、患者情報を個人端末へ無断で持ち出さないでください。

なお、EFの変化には計測条件だけでなく、実際の状態の変化も関係します。「数値が違うから操作ミス」と決めつけず、臨床的な解釈は医師・指導者と確認する必要があります。[3]

EFの測定方法について、よくある質問

四腔像だけで測ったEFと、二断面Simpson法は同じですか?

同じ計測条件ではありません。本記事の二断面法は、四腔像と二腔像を用います。計測値を比較するときは、EFの数字だけでなく、どの方法で求めたかも確認してください。[3]

EFが正常範囲なら、トレースは正しいと考えてよいですか?

正常範囲に入ったことは、計測手順が適切だったという証明にはなりません。断面・時相・輪郭を確認したうえで、数値を解釈します。また、EFだけで心機能全体を判断することはできません。[3]

前回の検査結果と比較するときは、何を残せばよいですか?

施設の記録手順に沿って、計測方法、計測値、使用した画像、描出や計測上の制限を確認できるようにします。ASEの2025年の報告標準化ガイドラインでも、分かりやすい記録と経時的な比較が重視されています。[4]

心エコーの描出や計測で迷うところを、実技で相談したいあなたへ

この記事を読みながら、「時相は選べるけれど、心内膜の境界に自信がない」「そもそも二腔像が安定しない」と、確認したいことが具体的になったかもしれません。

SASHIでは、医療従事者を対象に、経験や課題に合わせた完全マンツーマンの超音波検査実技レッスンを行っています。最初にお話を伺い、講師と画面や手元を確認しながら練習し、その日の内容を振り返ります。[5]

通常プライベートレッスン
臨床検査技師・看護師・診療放射線技師などの医療従事者向け。1回2.5時間・40,000円(税抜)。
医師向けプライベートレッスン
1回2.5時間・50,000円(税抜)。
会場
大阪・新大阪駅から徒歩5分。完全個室で実施します。

Simpson法について相談したい場合は、描出・フレーム選択・トレースのどこで迷っているかを事前にお知らせください。希望する計測内容や使用機器に対応できるかは、受講前に確認しましょう。

相談内容の書き方の例

「心エコーの基本断面を練習しています。二腔像の描出と、Simpson法のトレースに不安があります。現在の経験に合わせて、どこから練習すればよいか相談したいです。」

学ぶ場所を比較している方は、大阪でエコーハンズオンを選ぶ7つのポイントもご覧ください。自分が操作できる時間や、個別に質問できる環境を確認するための記事です。

「どこを練習したいか」から相談できます

まずは内容・料金を確認し、希望する練習内容と日程をお知らせください。申し込み前の相談はLINEでも受け付けています。

申し込む前にLINEで相談する

フォーム送信後、担当者から日程についてご連絡します。送信時点では日程は確定しません。受講内容は事前にご相談ください。1回での技術習得を保証するものではありません。[5][6]

まとめ|EFの数字より先に、計測した過程を確認しよう

Simpson法の学習では、描出・時相・トレースを一度に考えると混乱しやすくなります。「断面は適切か」「どのフレームか」「どこを囲んだか」に分けて、迷った場所を具体的にしてみてください。

「EFをうまく測れない」から、「二腔像の心尖部で迷う」「乳頭筋付近の線を確認したい」へ。相談したいことが整理できると、次に取り組む練習を決める手掛かりになります。

参考資料・公式情報

  1. 日本心エコー図学会「心エコー図の診断・計測精度管理の手引き」(2023、修正版) :左室容積の計測、p.7。
  2. ASE「Guidelines for Performing a Comprehensive Transthoracic Echocardiographic Examination in Adults」(2019) :左室容積・二断面disk summation法、p.32。
  3. 日本循環器学会/日本心エコー図学会「2021年改訂版 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン」 :LVEF、p.34。
  4. ASE「Guidelines for the Standardization of Adult Echocardiography Reporting」(2025) :報告標準化の公式概要。
  5. SASHI公式:個人向けマンツーマンレッスン :提供内容・料金。
  6. SASHI公式:個人レッスンのお申し込み :入力項目・日程調整の流れ。

資料・サービス情報の確認日:2026年11月1日。この記事は医療従事者の学習支援を目的とし、個別の診断や施設での技能評価に代わるものではありません。

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