訪問診療でポータブル超音波を使ったとき、「訪問先だから400点なのか」「心臓を見たから880点なのか」と迷うことがあります。
ただし、超音波検査の算定区分は、訪問先で行ったことや使用した装置だけで決まるものではありません。
まず確認したいのは、どの訪問診療料を算定した日なのか、何を対象に、どの方法で超音波検査を行ったのかです。
この記事では、訪問診療で超音波検査を行った場合のD215について、400点の「訪問診療時に行った断層撮影法」と、経胸壁心エコー法880点を中心に、現場での確認手順として整理します。
2026年10月7日時点の厚生労働省資料をもとにしています。診療報酬や通知は変更・訂正されるため、実際の請求時には必ず最新の医科診療報酬点数表、通知、院内の請求体制を確認してください。
先に結論|「訪問先でエコーをした」だけでは点数は決まらない
D215「2」イの400点は、訪問先で実施したすべての超音波検査に適用される点数ではありません。
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定した日と同一日に、患家等で心臓超音波検査を除く断層撮影法を行った場合に確認する区分です。
この「訪問診療時に行った場合」は、部位にかかわらず400点で、月1回に限り算定する取扱いです。
一方、心臓を対象として経胸壁心エコー法を行った場合は、D215「3」イの経胸壁心エコー法880点を確認します。
経胸壁心エコー法については、「訪問先だから400点へ変更する」という扱いではありません。
また、D215の一般的な取扱いとして、同一患者について同一月に同一検査を2回以上実施した場合、2回目以降は所定点数の90%で算定する規定があります。
つまり、「訪問=400点」「心臓を見た=自動的に880点」と覚えるのではなく、訪問料・対象・検査方法・実施内容を順番に確認することが大切です。
この記事で確認するポイント
- 訪問診療時400点の対象になる断層撮影法を確認する
- 心臓超音波検査と心臓以外の断層撮影法を区別する
- 訪問診療・往診・訪問看護を同じものとして扱わない
- POCUSやポータブル装置という名称だけで請求区分を決めない
- 医師以外が実施した場合の記録と医師確認を整理する
- 同一月に複数回実施した場合の取扱いを確認する
最初に分けるのは「訪問先」ではなく、訪問料と検査内容
訪問診療で超音波検査を行ったときは、ポータブル装置を使ったかどうかより先に、次の4点を確認します。
- 訪問の種類:在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定した日か
- 対象:心臓なのか、胸水・腹水・腹部臓器など心臓以外なのか
- 方法:経胸壁心エコー法なのか、心臓以外の断層撮影法なのか
- 記録:医学的理由、主な所見、測定値、画像、医師確認などが残っているか
D215「2」イの訪問診療時400点について、厚生労働省の実施上の留意事項では、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定した日と同一日に、患家等で心臓超音波検査を除く断層撮影法を行った場合に算定する取扱いが示されています。
そのため、
「患者宅で行った」
「携帯型エコーを使った」
という事実だけでは400点とは判断できません。
400点になるのは「心臓以外の断層撮影法」の訪問診療時
D215「2」は「断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)」です。
そのうち、訪問診療時に行った場合が400点となっています。
たとえば、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定した同日に、患家等で胸水を確認するため断層撮影法を行った場合などは、この区分の条件を確認します。
一方、心臓を対象に経胸壁心エコー法を実施した場合は、D215「3」の心臓超音波検査を確認します。
400点は「訪問診療で使うエコーの定額」ではありません。
訪問先で経胸壁心エコーを行った場合は880点の区分を確認する
D215「3」イの経胸壁心エコー法は880点です。
訪問先で実施したからといって、D215「2」イの400点へ置き換えるものではありません。
ただし、実際に何を行えば「経胸壁心エコー法」に該当するかは、単に心臓へプローブを当てたという事実だけでは判断できません。
実際の検査内容、目的、取得画像、所見などを確認する必要があります。
また、D215では同一患者について同一月に同一検査を2回以上行った場合、2回目以降は所定点数の90%で算定する規定があります。
経胸壁心エコー法について「月1回しか算定できない」と一律に整理しないよう注意しましょう。
ケースで確認|400点・880点・算定判断が必要な場面
ケースA|訪問診療日に胸水を確認した
医師が在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定する日に患家等を訪問し、呼吸困難などの評価の一環として胸水を超音波で確認した場面です。
心臓超音波検査ではなく、心臓以外の断層撮影法として行ったのであれば、D215「2」イの400点の条件を確認します。
この区分は月1回に限る取扱いです。
ケースB|訪問先で経胸壁心エコー法を行った
同じ訪問日に、心臓を対象として経胸壁心エコー法を行った場合です。
この場合は、訪問先だから400点とするのではなく、D215「3」イの経胸壁心エコー法880点の区分を確認します。
同一月に同一検査を複数回行った場合は、D215の複数回実施に関する規定も確認します。
ケースC|訪問看護中にポータブルエコーで短時間観察した
訪問看護の場面で、携帯型装置を使って心臓や胸水などを短時間観察したケースです。
「POCUSを行った」「携帯型エコーを使用した」という名称だけで、D215の特定の区分へ自動的に当てはめることはできません。
訪問の種類、検査目的、実施者、医師の指示、取得画像、結果の記録などを確認します。
ケースD|教育目的でスタッフ同士がスキャンした
教育や実技練習を目的として行ったスキャンと、患者の診療上必要な検査は分けて考える必要があります。
診療上必要な検査として実施した事実がないものを、後から診療報酬上の検査として扱わないよう注意します。
POCUSという言葉だけでは算定区分は決まらない
訪問診療では、ベッドサイドで必要な情報を短時間で確認するため、POCUSという考え方が使われることがあります。
ただし、POCUSは診療報酬上の独立した一つの検査コードではありません。
そのため、
「POCUSをしたから400点」
「心臓を見たから880点」
という決め方はできません。
何を目的に、どの部位を、どの方法で観察し、どのような画像・所見を記録したのかを確認したうえで、D215の該当区分を検討します。
使用する機器がポータブルであることと算定区分を混同しないために、ポータブルエコーの保険点数を考えるときの確認事項も参考にしてください。
超音波検査では、画像と所見の記録が必要
D215の超音波検査を算定する際には、実施したという記録だけでなく、検査結果を確認できる形で残す必要があります。
厚生労働省の通知では、胎児心エコー法を除く超音波検査について、主な所見を診療録に記載するか、検査実施者が測定値や性状などを文書に記載する取扱いが示されています。
また、検査で得られた画像を診療録に添付することが求められています。
医師以外が検査を実施した場合には、検査実施者が作成した文書について、医師が確認した旨を診療録に記載します。
「誰がプローブを持ったか」だけでなく、誰が結果を確認し、どのように診療録へ残したかまで含めて運用を決めておくことが重要です。
医師以外が超音波検査を行う場合の確認ポイント
臨床検査技師など医師以外の医療従事者が超音波検査を実施する場合でも、実施者だけで請求の可否や請求主体が決まるわけではありません。
院内では、
- 誰の指示で検査を行うのか
- 誰が検査を実施するのか
- 画像をどこへ保存するのか
- 測定値・所見をどの文書へ記載するのか
- 医師がどのように結果を確認するのか
- どの保険医療機関が請求するのか
を整理しておきます。
外部の事業者や別組織のスタッフが関わる場合には、契約関係や責任分担、個人情報・画像管理についても別途確認が必要です。
実施前から請求前までの院内ワークフロー
超音波検査の算定は、請求時に点数だけ確認するより、実施前から必要な情報を揃えておく方が整理しやすくなります。
1.何を確認する検査なのか決める
心臓を評価するのか、胸水・腹水など心臓以外を評価するのかを整理します。
2.訪問の種類を確認する
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定する日なのか、往診なのか、訪問看護なのかを確認します。
3.実施する超音波検査の方法を確認する
経胸壁心エコー法なのか、心臓以外の断層撮影法なのかなど、実際の検査方法を整理します。
4.画像・所見・医師確認を残す
主な所見や測定値を記録し、画像を保存します。
医師以外が検査した場合は、必要な文書を医師が確認した旨も診療録へ残します。
5.請求前に同一月の実施回数を確認する
D215「2」イの訪問診療時400点は月1回です。
それ以外のD215の検査では、同一患者について同一月に同一検査を2回以上実施した場合の90%算定規定も含めて確認します。
請求前に確認したいチェックリスト
- どの訪問料を算定した日なのか
- 検査の医学的理由は記録されているか
- 心臓か、心臓以外か
- どの方法で検査したか
- 誰が実施したか
- 主な所見または測定値が残っているか
- 画像が診療録で確認できる状態になっているか
- 医師以外が実施した場合、医師確認が記録されているか
- 同一月に同じ検査を何回行ったか
- 請求コードと実施内容が一致しているか
心臓超音波検査とMモード法を混同しない
D215「3」には、経胸壁心エコー法880点のほか、Mモード法500点などの区分があります。
Mモード法500点は、Mモード法のみで検査を行った場合に確認する区分です。
通常の断層像を含む経胸壁心エコーを実施したうえで、途中でMモードも使用したからといって、経胸壁心エコー法とMモード法を別々に算定するものではありません。
また、心臓超音波検査の所定点数には、同時に記録した心電図等の費用が含まれる取扱いがあります。
装置画面で使用したモードではなく、検査全体としてどの方法を行ったのかを確認しましょう。
同じ月に心エコーを2回したらどうなる?
D215では、胎児心エコー法を除き、同一患者について同一月に同一検査を2回以上行った場合、2回目以降は所定点数の90%に相当する点数で算定する規定があります。
したがって、経胸壁心エコー法について「月1回まで」と整理するのは適切ではありません。
一方、D215「2」イの訪問診療時に行った断層撮影法400点には、明確に月1回の制限があります。
「月1回」と「2回目以降90%」は別の規定なので、混同しないことが重要です。
往診・訪問診療・訪問看護は分けて考える
日常会話では、患者宅へ行く医療をまとめて「訪問」と表現することがあります。
ただし、診療報酬では、
- 在宅患者訪問診療料
- 往診料
- 訪問看護
は同じものではありません。
D215「2」イの400点については、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定した日との同日関係が通知上明示されています。
そのため、「患者宅で行った」という理由だけで往診日や訪問看護日にも同じ考え方を当てはめないようにします。
返戻や院内の行き違いを減らすための記録
記録では、「心エコー実施」とだけ書くより、実際に何を行ったかが追える形にしておく方が分かりやすくなります。
たとえば、院内の様式に応じて、
- 検査日
- 訪問診療との関係
- 検査を行った医学的理由
- 対象部位
- 検査方法
- 実施者
- 主な所見・測定値
- 画像の保存先
- 医師の確認
- 同一月の実施回数
を確認できるようにします。
厚生労働省の通知上必要な事項と、院内で管理のため追加する事項は分けて整理すると運用しやすくなります。
記録は算定のためだけでなく、次回の診療時に前回の検査目的や結果を確認するためにも使われます。
記録例は「算定のための後付け」にしない
たとえば、
「訪問時、心エコー実施」
という一文だけでは、どの方法で何を評価し、どのような結果だったのか分かりにくくなります。
実際に行った内容に沿って、
「呼吸困難の評価目的で経胸壁心エコー法を実施。主な所見を検査文書に記載し、取得画像を保存。医師が画像および検査文書を確認」
など、施設の診療録様式に合わせて事実を具体的に記録する方法が考えられます。
ただし、請求のために後から検査目的や所見を作るのではなく、実施時点の事実を記録することが前提です。
訪問診療への超音波導入では、算定以外の運用も整理する
訪問診療へ超音波検査を導入するときは、診療報酬だけでなく、実際の検査運用についても整理する必要があります。
たとえば、
- 誰が検査を行うのか
- 画像をどこへ保存するのか
- 院外から画像を共有する方法
- 医師へどのように報告するのか
- 個人情報をどう管理するのか
- 機器の清掃・感染対策をどう行うのか
- スタッフの実技教育をどう進めるのか
などです。
チェックリストを作ることは役立ちますが、チェック項目だけで個別患者の算定可否や検査の必要性を判断できるわけではありません。
判断に迷う場合は、最新の厚生労働省資料を確認し、医師・検査担当者・医療事務など院内の関係者で実施内容を共有してください。
訪問診療で使う超音波の教育体制については、訪問診療で超音波検査を活かすための研修体制も参考にしてください。
SASHIでは、訪問診療を想定した超音波実技研修も相談できます
SASHI合同会社では、医師・臨床検査技師など医療従事者を対象に、超音波検査の実技研修を行っています。
個別患者について診断や診療報酬の請求可否を判断するサービスではありません。
研修では、施設や受講者の状況に応じて、
- プローブの位置・角度・回転
- 基本断面
- 計測
- 装置設定
- 訪問先を想定した画像取得
- 画像や所見を医師へ共有する流れ
など、必要な実技を確認します。
法人研修では、研修前に受講者の経験や施設で困っていることを確認し、実技研修後に院内で次に取り組む内容も整理します。
院内教育をすべて外部へ任せるのではなく、院内だけでは時間を取りにくい実技教育の一部を支えるという位置づけです。
よくある質問
Q1. 訪問診療で心エコーをしたら400点ですか?
一律に400点ではありません。
D215「2」イの400点は、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定した日と同一日に、患家等で心臓超音波検査を除く断層撮影法を行った場合に確認する区分です。
Q2. 訪問先で経胸壁心エコー法を行ったら880点ですか?
D215「3」イには経胸壁心エコー法880点が設定されています。
ただし、患者宅で心臓にプローブを当てたという事実だけで経胸壁心エコー法の算定が確定するわけではありません。
実際の検査内容、医学的必要性、画像、所見、記録などを確認してください。
Q3. 往診日に行った超音波検査も400点ですか?
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)との同日関係が400点の通知上の条件となっているため、往診と同じ扱いとは限りません。
訪問診療と往診を分けて確認してください。
Q4. POCUSならD215で算定できますか?
POCUSという名称だけでは算定区分は決まりません。
目的、対象部位、検査方法、取得画像、所見、実施体制などから、実際にどの検査を行ったのかを確認します。
Q5. 臨床検査技師が訪問先で実施した場合はどうなりますか?
臨床検査技師が実施したという事実だけで請求主体や算定区分が決まるわけではありません。
医師の指示、検査結果の記録、医師による確認、画像・文書の管理、請求する保険医療機関などを確認してください。
Q6. 経胸壁心エコー法を同じ月に2回行った場合は?
D215では、同一患者について同一月に同一検査を2回以上行った場合、2回目以降は所定点数の90%で算定する一般規定があります。
経胸壁心エコー法880点を「月1回まで」と一律に扱わないよう注意してください。
一方、D215「2」イの訪問診療時400点は月1回に限ります。
Q7. 超音波検査の記録には何が必要ですか?
主な所見を診療録に記載するか、検査実施者が測定値や性状などを文書に記載します。
検査で得られた画像も診療録へ添付します。
医師以外が検査を実施した場合は、その文書について医師が確認した旨を診療録に記載する取扱いも確認してください。
まとめ|400点と880点は「場所」ではなく実施内容から確認する
- 訪問先で超音波検査をしたという理由だけで400点にはならない
- 400点は、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)との同日関係がある心臓以外の断層撮影法で確認する
- D215「2」イの400点は月1回に限る
- 経胸壁心エコー法はD215「3」イの880点を確認する
- 経胸壁心エコー法を一律に「月1回まで」としない
- 同一患者・同一月に同一検査を複数回行った場合は、D215の90%算定規定を確認する
- POCUSやポータブルという名称だけで区分を決めない
- 主な所見、画像、実施者、医師確認などの記録を整える
算定を考えるときは、「どこで行ったか」だけでなく、「何のために、何を、どの方法で行ったか」を順番に確認することが重要です。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「医科診療報酬点数表 D215 超音波検査」
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」
- 厚生労働省「診療報酬情報提供サービス・診療報酬改定関連資料」
訪問診療で使う超音波の教育体制を整えたい方へ
SASHIエコーラボでは、医師・臨床検査技師などの医療従事者を対象に、心エコーを含む超音波検査の実技指導、訪問診療を想定した法人研修、画像や所見を共有する院内教育の相談を行っています。個別患者の診断や請求可否を断定する相談ではなく、検査目的に沿った描出、記録、報告、スタッフ教育の進め方を整理したい医療機関・学習者向けの相談窓口です。
超音波検査の研修・学習相談を問い合わせる受講前の相談だけでも可能です。現在の経験や目標に合わせてご案内します。