訪問診療 心エコー 算定の全体像|400点と心臓超音波検査の違い、確認手順

訪問診療で心エコーを実施した場合の算定を、訪問診療時の断層撮影法400点と経胸壁心エコー法880点の違いから整理。施設基準、月1回制限、記録、POCUSの考え方を解説します。

公開: 約15分

訪問診療でポータブル超音波装置を使い、心臓の動きや心嚢液を確認する場面が増えています。一方で、「訪問先で行った超音波だから400点」「心臓を見たから880点」と単純に判断すると、検査区分や月1回制限、施設基準、記録との間にずれが生じることがあります。

訪問診療時の断層撮影法400点は、文言上、心臓超音波検査を除く区分です。経胸壁心エコーを診療報酬上の心臓超音波検査として扱う場合は、D215「3」イの条件を確認します。ただし、短時間の補助的観察が正式な心臓超音波検査に当たるかは、目的や方法、記録などを含めた個別確認が必要です。

この記事では、2026年7月25日に確認した資料をもとに、訪問診療で心エコーを算定する際の考え方を、基本区分、判断手順、記録、具体例の順に整理します。患者個人の請求可否や診断・治療を決めるものではなく、医療機関内で確認するための教育情報です。

この記事の結論

訪問診療で心エコーを行った場合、訪問診療時の断層撮影法400点をそのまま心エコーの点数として扱うことはできません。D215「2」イの訪問診療時区分は心臓超音波検査を除外しているため、経胸壁心エコー法として実施したのか、Mモード法のみなのか、あるいは補助的なPOCUSなのかを、目的・方法・画像・診療録・施設基準・請求主体から確認します。点数表や通知は改定されるため、実際の請求では確認時点の公式資料と審査機関の取扱いを照合してください。

この記事でわかること

  • 訪問診療時の断層撮影法400点と、心臓超音波検査の区分は同じではないこと。
  • 令和8年度医科診療報酬点数表で確認される経胸壁心エコー法880点などの位置づけ。
  • 心エコーの算定前に、訪問の種類、目的、検査方法、実施者、請求主体、施設基準、同一月の回数を確認すること。
  • POCUSやポータブル装置の使用だけでは、算定区分を一律に決められないこと。
  • 診療録と検査記録に、医学的理由、評価内容、医師の確認、診療への反映を残す考え方。

訪問診療の心エコー算定で最初に確認すること

訪問診療で心臓を観察した場合でも、訪問診療時の断層撮影法400点を心エコーに一律適用するわけではありません。心臓超音波検査として実施したのか、心臓以外の断層撮影法なのかを、検査目的と方法から分けて確認します。

D215「2」イは「断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)」の訪問診療時区分です。したがって、400点は訪問先で行う超音波検査全般の定額として説明できません。心臓を対象に、形態、壁運動、弁、血流などを評価する検査は、D215「3」心臓超音波検査の確認対象になります。

一方、訪問診療時に胸水、腹水、腹部臓器などを観察した場合は、心臓超音波検査とは異なる断層撮影法の区分を検討することがあります。最終的な請求は、検査内容だけでなく、診療録、画像・検査記録、保険医療機関の届出、請求実務を併せて確認します。

  • 「訪問先で実施したか」だけでなく、何を、なぜ、どの方法で検査したかを確認する。
  • 400点を「訪問診療の心エコー点数」と表現しない。
  • 患者ごとの請求可否は、医療機関の請求担当者や関係機関の確認を経て判断する。
訪問診療で混同しやすい超音波検査の整理
確認対象 考える区分・論点 注意点
胸水・腹水・腹部臓器など 心臓超音波検査を除く断層撮影法の訪問診療時区分など 対象部位、目的、月1回区分などを確認する
経胸壁で心臓を評価 D215「3」イの経胸壁心エコー法 施設基準・届出、月1回制限、記録を確認する
Mモード法のみ D215「3」ロの扱い Mモード法のみで実施したかを確認する
短時間の補助的な心臓観察 POCUSとしての臨床的位置づけと正式な検査区分を分けて確認 装置がポータブルであることだけでは算定区分は決まらない

具体例

  • 訪問診療で呼吸困難の患者に胸部を観察し、胸水の有無を確認した場合は、心臓超音波検査としてではなく、心臓以外の断層撮影法の論点を確認します。
  • 心臓の壁運動や弁、心嚢液などを経胸壁で評価した場合は、D215「3」イの経胸壁心エコー法に関する条件を確認します。

注意点

  • 点数は診療報酬改定や通知の変更で変わるため、記事内の点数を将来の請求にそのまま適用しないでください。
  • この整理は個別患者の請求や返戻の結果を保証するものではありません。

例外・適用できないケース

  • 同じ訪問日に心臓と胸水など複数の対象を観察しても、測定項目数だけで複数区分を請求できるとは限りません。検査の一体性や通知上の扱いを確認します。

400点と経胸壁心エコー法880点の違い

調査時点の令和8年度医科診療報酬点数表では、訪問診療時の断層撮影法(心臓超音波検査を除く)は400点、経胸壁心エコー法は880点として整理されています。ただし、880点を訪問先で自動的に算定できるという意味ではありません。

D215「2」イの400点は、訪問診療時の断層撮影法のうち心臓超音波検査を除く区分です。対して、D215「3」イは経胸壁心エコー法です。両者は対象とする検査区分が異なるため、「訪問診療だから400点」「ポータブル装置だから880点」という装置や場所だけの判断は避けます。

同じD215でも、Mモード法、経食道心エコー法、胎児心エコー法、負荷心エコー法など、検査方法ごとに区分があります。通常の在宅訪問で行う検査と、専門的な検査を同じ言葉の「心エコー」でまとめず、実際の方法を記録することが重要です。

  • 訪問診療時の断層撮影法(心臓超音波検査を除く):400点。
  • 経胸壁心エコー法:880点。
  • 経食道心エコー法:1,800点。
  • 負荷心エコー法:2,010点。
  • Mモード法:Mモード法のみで行った場合の区分を確認する。
D215の主な確認項目(2026年7月25日確認)
区分 検査内容 確認する論点
D215「2」イ 断層撮影法(心臓超音波検査を除く)、訪問診療時 400点、月1回区分、心臓超音波検査の除外
D215「2」ロ 胸腹部、下肢血管、頭頸部・四肢・体表・末梢血管など 対象部位ごとの区分を確認
D215「3」イ 経胸壁心エコー法 880点、施設基準・届出、月1回制限など
D215「3」ロ Mモード法 Mモード法のみで行った場合かを確認
D215「3」ハ 経食道心エコー法 通常の訪問診療で行う検査とは前提が異なるため、実施条件を個別確認

具体例

  • 医師が訪問診療時に経胸壁心エコーを行い、左室収縮、壁運動、弁、心嚢液を評価した場合は、400点に置き換えず、経胸壁心エコー法の条件を確認します。

注意点

  • 上記の点数は確認時点の資料に基づくものです。レセプト提出時は最新の点数表、留意事項、通知を確認してください。
  • 心電図、心音図、脈波図、心機図の費用やパルスドプラ法の扱いは、心臓超音波検査に含まれる場合があるため、重複請求を避けます。

例外・適用できないケース

  • 同一月に同一検査を複数回行った場合の90%ルールがあっても、心臓超音波検査の月1回制限を無視して何度でも請求できるという意味にはなりません。

算定を判断する基本手順

算定前は、訪問の種類、対象部位と目的、検査方法、実施者と請求主体、施設基準・届出、同一月の回数、記録の整合性を順番に確認します。

まず、在宅患者訪問診療、往診、施設への訪問、訪問看護、通所、入院中の検査などを区別します。「訪問先で行った」という場所の情報だけでは、訪問診療時区分に該当するとは限りません。

次に、心臓の形態・収縮・壁運動・弁・血流を評価したのか、胸水・腹水・腹部臓器・血管を評価したのかを明確にします。そのうえで、経胸壁心エコー法、Mモード法、心臓以外の断層撮影法、補助的観察のどれに近いかを記録と照合します。

検査者が医師、臨床検査技師、診療放射線技師などのいずれであっても、資格だけで請求主体や算定可否が決まるわけではありません。医師の指示、結果確認、診療録への反映、画像保存先、請求する保険医療機関、外部委託時の責任分担を確認します。

  • Step 1:訪問の種類と検査を行った場所を確認する。
  • Step 2:対象部位と医学的な検査目的を確認する。
  • Step 3:検査方法と評価内容を、正式な区分と照合する。
  • Step 4:実施者、医師の指示・確認、請求主体を確認する。
  • Step 5:施設基準・届出、月1回制限、同一月の実施回数を確認する。
  • Step 6:診療録、検査記録、画像データ、レセプトの内容を一致させる。
施設内で使える確認シート
確認項目 記載・確認する内容
訪問の種類 在宅患者訪問診療、往診、施設訪問など
検査目的 症状・身体所見、検査が必要と判断した医学的理由
対象部位 心臓、胸水、腹部、下肢血管など
検査方法 経胸壁、Mモードのみ、断層撮影法、補助的観察など
実施体制 実施者、医師の指示、結果確認、外部委託の有無
請求関係 請求する保険医療機関、施設基準・届出、同一月の回数
記録 所見、画像保存、医師の評価、診療方針への反映

具体例

  • 医師の指示で臨床検査技師が訪問先で検査を実施した場合でも、技師の所属先が自動的に検査料を請求できるとは考えません。保険医療機関の体制、請求主体、記録、法令・院内規程を確認します。

注意点

  • 請求担当者だけで判断が難しい場合は、点数表・通知・施設基準を確認し、必要に応じて審査支払機関や地方厚生局などに照会してください。
  • 記事の内容は施設内の運用手順や契約書に代わるものではありません。

例外・適用できないケース

  • 外部事業者が機器や人員を提供する場合は、個人情報管理、結果の責任分担、画像データの保管、医師の確認経路が別途必要です。

訪問診療での超音波運用を、教育と記録の面から整理したい方へ

SASHIエコーラボでは、医療従事者向けに心エコーを含む超音波検査の実技指導、訪問診療・在宅医療の現場を想定した法人研修、施設内の教育体制づくりを支援しています。診療報酬の個別請求を断定する相談ではなく、検査目的に沿った画像取得、所見の伝え方、記録の整え方、スタッフ教育の進め方を整理したい場合にご相談ください。

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心エコーの記録でそろえたい項目

「心エコー実施」とだけ残すのではなく、なぜ実施し、どの方法で何を評価し、医師がどう診療に反映したかを記録します。記録は算定のためだけでなく、教育、監査、返戻時の説明にも関係します。

基本記録には、検査日・時刻、訪問診療日との関係、検査目的、症状や身体所見、検査部位、方法、実施者、医師の指示・確認、使用機器、画像保存の有無、測定値・所見、診療方針への反映、前回検査日、同一月の実施回数を含めます。

心エコーでは、経胸壁心エコー法かMモード法のみか、左室収縮能や壁運動、弁、心嚢液など何を評価したか、パルスドプラ法や同時記録検査の扱いを整理します。検査項目を多く測定したことだけで点数が決まるわけではありません。

教育面では、実施者が画像の取得だけでなく、目的に沿った記録と医師への報告を行えるよう、施設内でテンプレートや確認基準を整えると運用しやすくなります。

  • 検査を必要とした医学的理由。
  • 訪問診療日・検査日・検査時刻。
  • 検査方法と対象部位。
  • 実施者、医師の指示、医師による結果確認。
  • 画像・動画の保存先と保存の有無。
  • 主な所見と測定値。
  • 診療録に記載した評価と診療方針への反映。
  • 同一月の前回検査日と実施回数。
心エコー記録の最低限の整理例
場面 記録例の方向性
目的 呼吸困難、浮腫、体液管理など、検査を必要とした臨床上の理由を記載
方法 経胸壁心エコー法、Mモード法のみ、補助的観察などを実際の内容に合わせて記載
評価 左室収縮、壁運動、弁、心嚢液など、実際に評価した項目を記載
結果の扱い 医師が結果を確認し、訪問診療の評価や方針にどう反映したかを記載
データ管理 画像・動画の保存先、検査記録との照合方法を記載

具体例

  • 「心エコー実施」だけではなく、「呼吸困難の評価目的で経胸壁心エコーを実施。心嚢液、左室収縮、壁運動を評価し、医師が画像と所見を確認した」のように、実施内容と診療上の位置づけを施設の記録様式に沿って具体化します。

注意点

  • 例文は記録様式の一例であり、実際には患者の状態と実施内容に合わせて記載します。
  • 基準値や所見の解釈は、装置、対象、検査条件、施設手順、ガイドラインなどにより異なります。

例外・適用できないケース

  • 画像保存や記録の要件は、検査区分、施設の電子カルテ、院内規程、最新通知などで確認が必要です。

ポータブル心エコー・POCUSはどう考えるか

ポータブル装置を使ったことだけで、算定可能または算定不可とは判断できません。POCUSとしての臨床的な補助観察と、診療報酬上の正式な心臓超音波検査に該当するかを分け、目的・方法・記録・医師の診療との関係を確認します。

訪問診療では、左室収縮の大まかな確認、心嚢液、下大静脈、胸水、右心負荷を疑う所見などを短時間で観察することがあります。これは診療上有用な情報になり得ますが、観察内容が似ていることだけで、D215「3」イの経胸壁心エコー法に該当すると断定することはできません。

反対に、「ポータブルだから保険請求できない」と一律に決めることも適切ではありません。正式な区分との関係は、検査の目的、実施方法、記録、画像保存、医師の評価、施設基準、請求実務を合わせて確認します。

  • ポータブル機器の使用は、検査区分を単独で決める要素ではない。
  • 短時間の観察でも、診療上の目的と評価内容を記録する。
  • 正式な心臓超音波検査として請求する場合は、施設基準・届出などを確認する。
  • 迷う場合は、医事担当者、審査支払機関、地方厚生局などへ照会する。
POCUS運用で分けて考える軸
臨床上の観察 診療報酬上の確認
ベッドサイドで素早く情報を得る D215のどの検査区分に該当するか
左室収縮や心嚢液などを確認する 検査目的・方法・記録・画像保存の整合性
診療の補助として医師が判断する 施設基準・届出、月1回制限、請求主体
ポータブル機器を使用する 機器の携帯性だけでは算定可否を決めない

具体例

  • 訪問先で医師がポータブル装置を用い、左室収縮と心嚢液を短時間確認した場合は、POCUSとしての観察内容と、正式な心臓超音波検査として請求する場合の要件を分けて記録・確認します。

注意点

  • POCUSのすべての運用を厚生労働省の点数表だけで一律に判定できるとは限りません。施設の請求担当者と最新の公式資料を確認してください。

例外・適用できないケース

  • 診療録への記載があっても、検査方法や施設基準など他の条件が満たされるとは限りません。記録は必要な確認の一部として扱います。

よくある質問

Q1. 訪問診療で心エコーを行うと400点で算定できますか?

A. 一律に400点とはいえません。訪問診療時の断層撮影法400点は、文言上、心臓超音波検査を除く区分です。経胸壁心エコーを診療報酬上の心臓超音波検査として行った場合は、D215「3」イの条件を確認します。

Q2. 訪問先で経胸壁心エコーを行うと880点を算定できますか?

A. 令和8年度点数表では経胸壁心エコー法は880点と確認されますが、訪問先で実施しただけで自動的に算定できるわけではありません。検査目的・方法、施設基準・届出、月1回制限、請求主体、記録などを確認してください。

Q3. ポータブル心エコーなら算定できないのでしょうか?

A. ポータブルであることだけで算定可否は決まりません。POCUSとしての補助的観察か、正式な心臓超音波検査として実施したのかを、目的、方法、画像、診療録、医師の確認、施設の請求体制から整理します。

Q4. 臨床検査技師が訪問先で検査すれば、所属先から請求できますか?

A. 検査者の資格だけで請求主体が決まるわけではありません。医師の指示、結果の確認、保険医療機関の体制、記録・画像の保存、外部委託契約、法令・院内規程を確認する必要があります。

Q5. 心エコーは同じ月に何回でも算定できますか?

A. 心臓超音波検査には月1回の算定制限に関する記載があるため、何度でも算定できるとは考えません。同一月の複数回実施に関する90%ルールだけで判断せず、検査区分と最新の通知を確認してください。

Q6. 心エコーと同時に心電図やパルスドプラ法を別算定できますか?

A. 心臓超音波検査の所定点数に、同時記録した心電図などやパルスドプラ法の費用が含まれ、別に算定できない扱いがあります。実施方法と最新の留意事項を確認し、重複請求を避けてください。

Q7. この記事を見れば患者ごとの請求可否を判断できますか?

A. できません。この記事は医療従事者向けの一般的な整理です。実際の請求は、患者の診療内容、医療機関の届出、記録、契約、最新の点数表・通知、審査機関の取扱いを確認して判断してください。

まとめ

この記事の要点

  • 訪問診療時の断層撮影法400点は、心臓超音波検査を除く区分です。
  • 経胸壁心エコー法は、確認時点の令和8年度点数表で880点ですが、訪問先で実施しただけで自動算定できるわけではありません。
  • 心エコーの算定では、検査の目的、対象部位、方法、実施者、請求主体、施設基準・届出、同一月の回数を確認します。
  • ポータブル装置やPOCUSは、臨床上の補助観察と診療報酬上の正式な検査区分を分けて考えます。
  • 診療録には、実施理由、評価内容、医師の確認、画像保存、診療への反映を記録します。
  • 点数や制度は改定されるため、請求時は最新の厚生労働省資料と関係機関の取扱いを確認してください。

参考資料

  1. 令和8年度診療報酬改定 医科診療報酬点数表厚生労働省 / 2026-03-00

    参照内容:D215の超音波検査、経胸壁心エコー法、心臓超音波検査の条件などを確認するために参照。

  2. 令和8年度診療報酬改定に関する資料厚生労働省 / 2026-03-00

    参照内容:訪問診療時の断層撮影法、同一月の複数回実施に関する通則などを確認するために参照。

  3. 心臓超音波検査の費用日本超音波医学会

    参照内容:心臓超音波検査に関する一般的な説明を確認するために参照。

  4. 診療報酬改定資料・医科点数表関連ページ厚生労働省・診療報酬情報提供サービス

    参照内容:令和8年度改定の最新資料を確認するための参照先。


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