腹部エコーの肝区域の覚え方|S1〜S8を門脈・肝静脈から迷わず整理する方法

公開: 約13分

腹部エコーを勉強していると、肝臓のところで急に覚える数字が増えます。

S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8。

教科書の模式図を見ていると分かったつもりになるのに、実際のエコー画像になると、「今見ているのはS5?S8?」「S6とS7はどこで分ける?」「肝静脈と門脈が出てくると余計に混乱する」と迷ってしまうことがあります。

何度も図を見て暗記したのに、プローブを持つと分からなくなる。

そんな状態になると、「自分は解剖が苦手なのかな」と不安になるかもしれません。

肝区域が覚えにくいのは、S1〜S8という数字だけを覚えようとすると、実際のエコー画像とつながりにくいからです。

肝区域は、肝臓の表面に線が引かれているわけではありません。

エコーでは、門脈・肝静脈・下大静脈・胆嚢など、画像上で確認できる構造を手掛かりにして、今どの区域を見ているのかを考えます。

つまり、必要なのはS1〜S8の場所を丸暗記することではありません。

「この血管が見えたから、この区域を考える」という判断の軸を作ることです。

最初に結論|肝区域は「肝静脈・門脈・上下」の3段階で覚えます

腹部エコーで肝区域を整理するときは、次の順番で考えると迷いにくくなります。

  1. 肝静脈で大きな区域の境界を考える
  2. 門脈枝で各区域の位置を確認する
  3. 門脈レベルより上か下かで上下区域を整理する

大まかには、肝静脈は区域の境界を走り、門脈枝は区域内を走るという考え方が肝区域を理解する土台になります。

S1〜S8を数字として覚えるのではなく、血管との位置関係として覚えましょう。

肝区域を覚える前に|S1〜S8は「住所」のように考える

肝区域は、肝臓の中の場所を共通言語として表すために使われます。

腫瘤や病変が肝臓のどこにあるのかを伝えるとき、「右葉のどこか」ではなく「S6にある」と表現できれば、位置をより具体的に共有できます。

一般的に使われるCouinaud分類では、肝臓をS1〜S8の8つの亜区域として整理します。

ここで最も重要なのは、区域境界を肝臓の外形だけから判断しようとしないことです。

肝区域は、門脈系と肝静脈系の位置関係を使って立体的に理解します。

最初に覚える一文

「門脈は区域の中、肝静脈は区域と区域の間」

まずこの関係を土台にすると、S1〜S8の位置関係が整理しやすくなります。

腹部全体の解剖がまだ曖昧な場合は、先に腹部エコーの解剖の覚え方を確認しておくと理解しやすくなります。

腹部エコーで覚えたいS1〜S8の早見表

区域 大まかな位置 覚えるポイント
S1 尾状葉 下大静脈近く、肝後方で確認する
S2 左外側区域・上方 左葉外側の上側
S3 左外側区域・下方 左葉外側の下側
S4 左内側区域 左葉と右葉前区域の間を意識する
S5 右前区域・下方 S8の下側
S6 右後区域・下方 S7の下側
S7 右後区域・上方 横隔膜側・深部を意識する
S8 右前区域・上方 S5の上側
最初から8区域をバラバラに覚えない

まずは次のグループで覚えます。

  • S2・S3:左外側区域
  • S4:左内側区域
  • S5・S8:右前区域
  • S6・S7:右後区域
  • S1:尾状葉

この5グループまで整理してから、上・下へ分けた方が暗記量を減らせます。

肝静脈は「区域と区域の境界」として見る

肝区域を理解するとき、まず大きな地図を作ってくれるのが肝静脈です。

代表的には、右肝静脈・中肝静脈・左肝静脈を確認します。

右肝静脈は右前区域と右後区域を分ける目印

右肝静脈を境に、肝右葉の前側と後ろ側を考えます。

  • 右前区域:S5・S8
  • 右後区域:S6・S7

つまり、右肝静脈が見えたら、まず「この血管の前側か後ろ側か」を考えるとS5・S8とS6・S7を分けやすくなります。

中肝静脈は右前区域と左内側区域を考える目印

中肝静脈は、右前区域と左内側区域の境界を考える重要なランドマークです。

S4とS5・S8の位置関係を整理するときに使います。

左肝静脈は左葉を理解する手掛かり

左肝静脈は左葉の区域理解に役立ちます。

ただし、実際の肝静脈走行には個人差があります。

模式図と完全に同じ形を探そうとせず、下大静脈へ流入する方向や周囲の構造を合わせて確認しましょう。

門脈は「区域の中を走る血管」として覚える

肝静脈で大きな境界を理解したら、次に門脈を確認します。

門脈本幹は肝門部で左右へ分かれ、さらに肝内へ枝分かれしていきます。

肝区域の理解では、門脈枝がそれぞれの区域へ入っていくイメージを持つことが大切です。

たとえば右葉では、門脈右枝から前区域・後区域へ向かう枝を追うことで、現在どの区域を見ているのかを判断しやすくなります。

「門脈を見つける」だけで終わらない

門脈が見えたら、その枝がどの方向へ伸びているのかを少しずつ追ってみてください。

血管を一本の静止画として覚えるより、「どこから来て、どこへ向かうのか」を追う方が、区域と結びつきやすくなります。

S5とS8、S6とS7は「下か上か」で整理する

初心者が特に混乱しやすいのが、S5とS8、S6とS7です。

どちらも同じ区域内にあるため、数字だけだと覚えにくくなります。

ここはシンプルに、上下で整理してください。

区域 下方 上方
右前区域 S5 S8
右後区域 S6 S7
左外側区域 S3 S2

つまり、右葉では

  • 前・下=S5
  • 前・上=S8
  • 後・下=S6
  • 後・上=S7

という組み合わせになります。

まず「前か後ろか」を決め、そのあと「上か下か」を考えると、一度に判断する情報量を減らせます。

S1〜S8を、エコー画像とつながる形で覚える

S1|尾状葉

S1は尾状葉です。

肝後方、下大静脈近くに位置する区域として整理します。

初心者は肝左葉や門脈周囲に意識が集中して、S1の観察が抜けやすくなることがあります。

日本超音波医学会の超音波検査士認定試験でも、尾状葉は描出が重視される部位として明記されています。

S2・S3|左外側区域

S2とS3は、どちらも左外側区域です。

  • S2:上方
  • S3:下方

左葉外側区域を観察するときは、単に「左葉が映った」で終わらせず、上方・下方まで連続して追います。

S4|左内側区域

S4は左内側区域です。

中肝静脈、門脈左枝、胆嚢など周辺構造との位置関係を使うと整理しやすくなります。

検診の推奨記録断面でも、心窩部横走査〜斜走査でS4と門脈1次分枝を確認する断面が示されています。

S5|右前区域・下方

S5は右前区域の下方です。

「前区域+下」と覚えます。

胆嚢周囲や肝門部の位置関係も参考になります。

S6|右後区域・下方

S6は右後区域の下方です。

右腎と一緒に観察される断面では、肝右葉後下区域との位置関係を確認しやすくなります。

S7|右後区域・上方

S7は右後区域の上方です。

横隔膜側に近く、肋骨や肺の影響を受けて見えにくくなることがあります。

一方向だけではなく、肋間走査も使って観察します。

S8|右前区域・上方

S8は右前区域の上方です。

S5と同じ前区域ですが、S8は上側です。

右肋骨弓下走査と肋間走査の両方で位置関係を確認すると、立体的に理解しやすくなります。

肝臓自体の描出が安定しない方は、腹部エコーで肝臓が見えにくいときの走査のコツもあわせて確認してください。

実際の腹部エコーでは、この順番で肝区域を確認する

STEP 1

まず下大静脈と肝静脈を探す

肝臓全体を眺める前に、下大静脈とそこへ流入する肝静脈を確認します。

右・中・左肝静脈の位置関係から、肝臓の大きな区域分けをイメージします。

STEP 2

門脈本幹から左右の門脈枝を追う

次に肝門部で門脈を確認します。

右枝・左枝へ分かれたあと、どの方向へ枝分かれしていくのかを追います。

STEP 3

「前・後」を先に判断する

右葉では、右肝静脈を基準に前区域と後区域を整理します。

この時点では、まだS5かS8かを決めなくても構いません。

まず「前区域か、後区域か」を判断します。

STEP 4

そのあと「上・下」を判断する

前区域ならS5・S8、後区域ならS6・S7です。

そこから位置と門脈枝を見ながら、上方・下方を整理します。

STEP 5

プローブを動かして連続性を確認する

一枚の静止画だけでS○と決めて終わらないことが大切です。

プローブを少し動かし、血管や周囲の区域へどのようにつながるか確認します。

この連続性が分かるようになると、肝区域を「地図」として理解できるようになります。

腹部エコー初心者が肝区域で迷いやすい5つのポイント

1.S1〜S8を数字だけで暗記する

数字と位置だけを暗記すると、断面が変わった瞬間に分からなくなりやすいです。

必ず肝静脈・門脈とセットで覚えます。

2.教科書の模式図と同じ血管走行を探す

実際の門脈・肝静脈には分岐の個人差があります。

健常成人42例を超音波で検討した報告でも、門脈の一般的な分岐型は78.6%で、右後区域枝が門脈本幹から独立して分岐する例なども報告されています。

「教科書と違う=自分が間違えている」とすぐに考えず、血管の連続性を確認してください。

3.一枚の画像だけで区域を決める

肝臓は立体的な臓器です。

一枚の静止画だけで考えず、プローブを動かして門脈や肝静脈を追います。

4.S5とS8、S6とS7を同時に覚えようとする

最初に「前か後ろか」、次に「上か下か」と2段階に分けます。

判断手順を固定すると混乱を減らせます。

5.区域名は言えるのにプローブ操作とつながっていない

肝区域を実務で使うには、画像を見て答えられるだけでは足りません。

「この区域を見たいなら、どこからプローブを当て、どの方向へ傾けるか」まで結びつける必要があります。

エコープローブの持ち方・動かし方も一緒に確認すると、解剖と手技をつなげやすくなります。

SASHIの一次情報|「覚える」だけでなく実際に再現できるところまで分けて学ぶ

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公式サイトで公開しているこれまでの受講者傾向では、経験者は3回程度、未経験者は5回程度の受講パターンが多くなっています。

これは「肝区域だけを覚えるために必要な回数」ではなく、全走査・計測方法や苦手分野を含めた個人レッスン全体の目安です。

そのうえで大切なのは、知識を増やすだけではなく、現在どこで止まっているかを分けることです。

  • 区域名そのものが覚えられていない
  • 肝静脈と門脈を区別できない
  • 画像では分かるが実機では見つけられない
  • 血管を追っても途中で現在地を見失う
  • S5/S8、S6/S7の上下関係がつながらない
  • 区域は分かるが、その断面を自分で再現できない

同じ「肝区域が分からない」という悩みでも、つまずいている場所は人によって異なります。

SASHIでは初回ヒアリングで現在のスキル、目標、苦手分野を確認し、その内容に合わせて個別カリキュラムを設計しています。

SASHI代表の坂田早希は、臨床検査技師として大阪の大学病院で5年、専門学校講師として5年の経験を持ち、現在は超音波検査のマンツーマン実技指導を行っています。

「教科書では肝区域を理解できるのに、実際にプローブを持つと分からなくなる」という方は、知識不足ではなく解剖と手の動きがまだつながっていない段階かもしれません。

肝区域を「暗記」から「実際に描出できる」へ

腹部エコーの肝区域、門脈・肝静脈、肝臓走査を実機で確認したい方は、現在の苦手な部分だけに絞って練習できます。

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腹部エコーの肝区域の覚え方に関するよくある質問

肝区域は何から覚えるのが一番分かりやすいですか?

最初はS1〜S8の数字を覚えるより、左外側区域、左内側区域、右前区域、右後区域、尾状葉という大きなグループから整理するのがおすすめです。

その後、肝静脈で区域の境界を考え、門脈枝と上下関係を使ってS番号へ分けます。

門脈と肝静脈は、肝区域でどう使い分けますか?

基本的な整理として、門脈枝は各区域内へ入り、肝静脈は区域間の境界を走ると考えると分かりやすくなります。

実際には分岐変異もあるため、一つの静止画だけではなく血管の連続性を確認します。

S5とS8の違いが覚えられません。

S5とS8はどちらも右前区域です。S5は下方、S8は上方と整理します。

まず右肝静脈を参考に前区域であることを確認し、その後上下関係を見ます。

S6とS7はどう覚えますか?

S6とS7は右後区域です。S6が下方、S7が上方です。

「後ろ+下=S6」「後ろ+上=S7」とセットで覚えると整理しやすくなります。

S2とS3の違いは何ですか?

どちらも左外側区域で、S2が上方、S3が下方です。

右葉と同じように上下の組み合わせとして理解すると覚えやすくなります。

肝区域の模式図は覚えたのに、実際のエコー画像では分かりません。

模式図を理解できている場合は、次に門脈・肝静脈を実際の画像で追い、その血管と区域の位置関係を結びつけてください。

静止画を見るだけでなく、プローブを動かしながら血管がどの方向へ続くのか確認する練習が重要です。

肝区域を覚えるには何度もエコーを練習した方がいいですか?

反復は重要ですが、区域を間違ったまま反復しても定着しにくくなります。

まず血管ランドマークと区域の関係を確認し、そのうえで同じ区域を別の走査方向から再現できるか練習すると理解が深まりやすくなります。

まとめ|肝区域はS1〜S8を丸暗記せず、血管から逆算して覚える

腹部エコーの肝区域は、数字だけを覚えようとすると実際の画像で迷いやすくなります。

まずは次の順番で整理してください。

  1. 肝臓を大きな区域に分ける
  2. 肝静脈を区域間の境界として見る
  3. 門脈枝を区域内のランドマークとして追う
  4. 右葉では前区域・後区域を分ける
  5. 最後に上・下を分ける

覚え方としては、

  • S2=左外側・上
  • S3=左外側・下
  • S4=左内側
  • S5=右前・下
  • S6=右後・下
  • S7=右後・上
  • S8=右前・上
  • S1=尾状葉

というグループから始めると整理しやすくなります。

そして最終的には、番号を答えられることではなく、自分でプローブを動かし、門脈・肝静脈を確認しながら区域を再現できることが実技では重要です。

図では分かるのに実機で分からない場合は、理解不足と決めつけず、解剖とプローブ操作を一緒に確認してみてください。

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※本記事は医療従事者の超音波検査学習を目的とした一般的な情報です。実際の区域判定・検査・診断については、施設の検査手順、指導者の指示、患者ごとの解剖学的変異、最新の専門資料等をご確認ください。

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