この記事の要点
エコーの同日算定を考えるときは、「何部位を検査したか」だけではなく、診療報酬上どの検査方法に該当するかを確認します。
- 心エコー+腹部エコー:心臓超音波検査と断層撮影法に分かれるため、それぞれの算定を検討します。
- 心エコー+頸動脈エコー:心臓超音波検査と断層撮影法に分かれるため、それぞれの算定を検討します。
- 腹部エコー+頸動脈エコー:いずれも心臓以外の断層撮影法にあたり、同一方法で同時に行った場合は部位数にかかわらず1回のみの算定が基本です。
- 心・腹部・頸動脈を同日に実施:実施した検査方法と内容を分けて確認します。
実際の算定では、検査内容、医学的必要性、実施状況、記録、同一月内の検査履歴、最新の通知などを確認する必要があります。
「心エコーと腹部エコーを同じ日に行ったら、両方算定できる?」「腹部エコーと頸動脈エコーは別の部位だから、それぞれ請求できる?」と迷うことがあります。
エコーの算定が分かりにくい理由の一つは、臨床で使う検査名と、診療報酬上の区分がそのまま一致しているわけではないことです。
たとえば腹部エコーと頸動脈エコーは観察部位が異なりますが、D215ではどちらも「断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)」に含まれます。
同日算定で迷ったときは、「何部位見たか」ではなく、まずD215上の検査方法を確認します。
この記事では、心エコー・腹部エコー・頸動脈エコーを例に、同日に複数の超音波検査を行った場合の基本的な考え方を解説します。
最初に確認しておきたいこと
本記事は、2026年10月時点で公表されている令和8年度診療報酬の情報をもとにした一般的な整理です。
実際の請求では、厚生労働省の最新の点数表・通知・疑義解釈等を確認し、院内の医事担当者などと照合してください。
エコーの同日算定は「部位」だけでなく検査方法を確認する
心エコー、腹部エコー、頸動脈エコーは、臨床上はそれぞれ異なる検査として扱われます。
一方、診療報酬ではD215「超音波検査」の中で、検査方法ごとに区分されています。
同一の方法による超音波検査を同時に行った場合は、部位数にかかわらず1回のみ算定するという取扱いがあります。
腹部エコーと頸動脈エコーは、どちらも「断層撮影法」
令和8年度のD215では、心臓以外の一般的な超音波検査は「断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)」として整理されています。
- 胸腹部:530点
- 下肢血管:450点
- その他(頭頸部、四肢、体表、末梢血管等):350点
腹部エコーは「胸腹部」、頸動脈エコーは通常「その他(頭頸部、四肢、体表、末梢血管等)」として確認します。
点数区分は異なりますが、検査方法としてはいずれも心臓以外の断層撮影法です。
そのため、腹部と頸動脈を同一方法で同時に検査した場合に、530点と350点をそのまま積み上げて算定する考え方にはなりません。
腹部エコーについては、腹部エコーの保険点数・記録・同日検査の注意点も参考にしてください。
頸動脈エコーについては、頸動脈エコーの算定と実施時の注意点でも詳しく解説しています。
心エコーは「心臓超音波検査」として分かれています
心エコーは、心臓以外の断層撮影法とは別に、D215「心臓超音波検査」として区分されています。
- 経胸壁心エコー法:880点
- Mモード法:500点
- 経食道心エコー法:1,800点
- 胎児心エコー法:300点
- 負荷心エコー法:2,010点
一般的な経胸壁心エコー法は、腹部・頸動脈などの「断層撮影法」とは異なる検査方法です。
そのため、異なる部位に対して、それぞれ必要な検査として心臓超音波検査と断層撮影法を実施した場合は、それぞれの算定を検討します。
ただし、検査方法が違えば自動的に両方算定できるという意味ではありません。
それぞれの検査として必要な内容を実施し、所見や画像など必要な記録を残していることが前提です。
エコー全体の診療報酬区分については、エコーの診療報酬を部位別に整理した基礎記事も参考にしてください。
迷ったときの確認順
- D215上のどの検査方法に該当するか
- 同じ方法による検査か、異なる方法か
- 同時に行った一連の検査なのか
- それぞれの検査に医学的な必要性があるか
- 画像や主な所見など必要な記録が残っているか
- 同一月内の実施履歴に注意が必要か
診療報酬点数は、厚生労働省の令和8年度医科診療報酬点数表でも確認できます。
心・腹部・頸動脈エコーの組み合わせを確認する
心エコーと腹部エコーを同日に行った場合
基本:異なる検査方法として、それぞれ算定を検討します。
- 心エコー:心臓超音波検査
- 腹部エコー:断層撮影法・胸腹部
心エコーと腹部エコーは、診療報酬上では異なる検査方法です。
そのため、それぞれ独立した検査として医学的に必要であり、実際に必要な内容を行った場合は、それぞれの算定を検討します。
一方、心エコーの途中で腹部を一部確認しただけの場合に、独立した腹部エコーを実施したものとして扱えるとは限りません。
「少し見た」ことと、「一つの超音波検査として実施した」ことは分けて考えます。
心エコーと頸動脈エコーを同日に行った場合
基本:異なる検査方法として、それぞれ算定を検討します。
- 心エコー:心臓超音波検査
- 頸動脈エコー:断層撮影法・その他
心エコーと頸動脈エコーも、D215上では異なる検査方法に分かれています。
それぞれの検査に医学的な必要性があり、実際に必要な検査内容を行った場合は、それぞれ算定を検討します。
頸動脈エコーで血流診断を目的として断層撮影法とパルスドプラ法を併せて行った場合は、要件を満たせばパルスドプラ法加算の対象となる場合があります。
カラードプラ表示を使用したことだけで、この加算になるわけではありません。
腹部エコーと頸動脈エコーを同時に行った場合
基本:同じ断層撮影法を同時に行った場合は、部位数にかかわらず1回のみの算定です。
- 腹部エコー:断層撮影法
- 頸動脈エコー:断層撮影法
腹部と頸動脈は観察部位が異なりますが、D215上の検査方法はいずれも「断層撮影法」です。
同一の方法による超音波検査を同時に行った場合は、部位数にかかわらず1回のみ算定するという取扱いがあります。
したがって、腹部と頸動脈を一連の検査として行った場合に、「部位が2か所だから530点+350点」と単純に算定することはできません。
どの区分で請求するかなど具体的な取扱いは、実際の検査内容と最新の通知を確認し、医事担当者と照合してください。
心エコー・腹部エコー・頸動脈エコーを同日に行った場合
3部位だから、そのまま3件算定するとは考えません。
まず検査方法を分けます。
- 心エコー:心臓超音波検査
- 腹部エコー:断層撮影法
- 頸動脈エコー:断層撮影法
心エコーは心臓超音波検査として整理します。
一方、腹部と頸動脈は同じ断層撮影法であるため、同時に行った場合は部位ごとに2件を積み上げる扱いにはなりません。
複数のエコーを同日に実施するときは、検査名の数ではなく、検査方法・実施内容・医学的必要性を分けて確認することが重要です。
組み合わせ別の基本整理
- 心エコー+腹部エコー:異なる検査方法として、それぞれ算定を検討
- 心エコー+頸動脈エコー:異なる検査方法として、それぞれ算定を検討
- 腹部エコー+頸動脈エコー:同じ断層撮影法を同時に行う場合は1回のみ
- 3種類すべて:心臓超音波検査と断層撮影法に分けて確認
同日算定では、画像や所見などの記録も確認する
算定区分だけを確認しても、必要な記録が残っていなければ、実際にどのような検査を行ったのか確認しにくくなります。
D215の超音波検査を算定する際には、画像や主な所見についても必要な取扱いが定められています。
検査を行った目的を確認する
複数の超音波検査を同じ日に行う場合は、それぞれ何を確認するために行ったのかを整理します。
- どの症状や所見から検査が必要になったのか
- 何を評価する目的だったのか
- なぜ複数の検査が必要だったのか
算定のために傷病名を追加するのではなく、実際の診療内容と検査目的が一致していることが前提です。
画像と主な所見を残す
超音波検査では、検査で得られた画像を診療録に添付するとともに、主な所見を診療録へ記載するなどの取扱いがあります。
検査実施者が測定値や性状等を文書に記載した場合は、その文書を診療録へ添付します。
医師以外が検査を行い、測定値や性状等を文書へ記載した場合は、医師がその内容を確認した旨を診療録へ記載する取扱いにも注意します。
同一月内の検査履歴も確認する
D215では、同一患者について同一月内に同一検査を2回以上行った場合、2回目以降を所定点数の90%で算定するという通則があります。
ただし、何が「同一検査」にあたるかはD215の留意事項も含めて確認する必要があります。
「同じ月にエコーをしたからすべて90%」「別部位だから必ず別算定」と単純に判断しないようにします。
別診療科や他部門で超音波検査が行われている場合もあるため、必要に応じて院内の実施履歴を確認します。
検査担当者と医事担当者で、区分を共有する
検査担当者が「腹部と頸動脈を行った」と伝えても、それだけでは診療報酬上どのような方法で実施したのか分かりにくいことがあります。
院内では、
- 検査オーダー名
- D215上の区分
- 実施した検査内容
- 画像・所見の記録方法
- 同日・同一月の検査履歴を確認する方法
- 算定判断に迷ったときの確認先
などを共有しておくと、確認しやすくなります。
避けたい考え方
- 部位が違えば、必ず別々に算定できると考える
- 同日であるという理由だけで、すべて1回にまとめる
- 検査時刻だけを分ければ別算定できると考える
- 一部を短時間観察しただけで、独立した検査として扱う
- 画像だけ保存し、主な所見や必要な記録を確認しない
- 同一月内の実施履歴を確認せず請求する
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- 装置設定
- 必要な画像を確認するときの考え方
などを実際にプローブを持ちながら確認します。
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診療報酬に関する関連記事は、診療報酬・算定・記録の記事一覧から確認できます。
エコーの同日算定についてよくある質問
腹部エコーと頸動脈エコーは、部位が違えばそれぞれ算定できますか?
同じ断層撮影法として同時に行った場合は、部位数にかかわらず1回のみの算定が基本です。
腹部は「胸腹部」、頸動脈は「その他」と点数区分は異なりますが、D215上はいずれも断層撮影法です。
心エコーと腹部エコーは同じ日に算定できますか?
心臓超音波検査と断層撮影法という異なる検査方法のため、それぞれ算定を検討できます。
ただし、それぞれ独立した検査として必要な内容を実施していることや、必要な記録が残っていることなどを確認します。
腹部エコーと頸動脈エコーを時間を分けて実施すれば、それぞれ算定できますか?
単に実施時刻を分けただけで、別算定できるとは判断できません。
同じ日に別々の検査として行った場合の具体的な取扱いは、検査方法、医学的必要性、実施状況、同一月内の履歴などを含めて確認する必要があります。
このようなケースは、最新の通知等を確認したうえで、院内の医事担当者などへ確認してください。
頸動脈エコーでカラードプラを使えば、パルスドプラ法加算を算定できますか?
カラードプラ表示を使用したことだけでは、パルスドプラ法加算にはなりません。
断層撮影法において、血管の血流診断を目的としてパルスドプラ法を併せて行った場合に、要件を満たせば加算を検討します。
この記事の要点整理
- エコーの同日算定は、部位数だけでなくD215上の検査方法を確認する
- 心エコーは「心臓超音波検査」に分類される
- 腹部エコーと頸動脈エコーはいずれも「断層撮影法」に含まれる
- 心エコー+腹部エコーは異なる方法として、それぞれ算定を検討する
- 心エコー+頸動脈エコーも異なる方法として、それぞれ算定を検討する
- 腹部+頸動脈を同じ断層撮影法で同時に行った場合は、部位数にかかわらず1回のみ
- 同一月内の同一検査2回目以降には90%の通則がある
- 画像、主な所見、検査内容など必要な記録を確認する
- 具体的な請求判断は最新の通知等と院内の医事担当者で確認する
「部位・方法・実施状況・記録」の順に確認すると整理しやすくなります。
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