人材が定着しない医療機関へ。今求められる“院内育成”の具体策

公開: 更新: 約7分

「病院 人員不足」に悩む現場で

「せっかく採用しても、なかなか定着しない」
「育成に時間をかけたいけれど、現場に余裕がない」
「教える人によって内容がばらついてしまう」

人員体制に悩む病院や医療機関では、このような課題を抱えていることもあるのではないでしょうか。

人員不足が続くと、採用だけでなく、教育や業務分担にも影響が出ることがあります。

また、入職後の教育体制が十分に整っていない場合、新しく入ったスタッフが不安を感じたり、業務を覚えるまでに時間がかかったりすることもあります。

そのため、「採用すること」だけでなく、入職後にどのように育成し、働き続けやすい環境をつくるかという視点も大切です。

この記事では、病院の人員不足を考えるうえで見直したい院内育成のポイントを紹介します。

人が定着しにくいときは、教育体制も見直してみる

離職には、給与、勤務条件、人間関係、仕事内容、キャリアの希望など、さまざまな要因が関係します。

その中の一つとして、入職後の教育体制や相談しやすさが関係する場合もあります。

たとえば、院内で次のような状況がないか確認してみましょう。

  • 教える人が決まっておらず、指導内容がその都度変わる
  • 誰に質問すればよいかわかりにくい
  • 新人や異動者が一人で悩みやすい
  • 失敗したときの振り返り方法が決まっていない
  • どこまでできれば次の業務に進めるのか不明確

人員に余裕がない職場では、教育する側の時間も限られます。

だからこそ、特定の人の経験や善意だけに頼るのではなく、施設としてある程度の育成の流れを決めておくことが大切です。

院内育成で確認したい3つのポイント

院内教育では、時間や人員を増やすことだけでなく、誰が・何を・どの順番で教えるかを整理することも重要です。

① 指導担当や相談先を明確にする

新人や異動したスタッフが「誰に聞けばよいかわからない」という状態にならないよう、指導担当者や相談先を明確にしておきます。

ただし、一人の担当者だけにすべてを任せると、そのスタッフの負担が大きくなることがあります。

主担当を決めたうえで、業務ごとに他のスタッフも関われるようにするなど、施設の人員体制に合わせて役割を分ける方法があります。

また、教育に必要な時間を勤務の中でどのように確保するかもあわせて考えることが大切です。

② 育成の流れを見える化する

指導内容をある程度整理しておくと、担当者によるばらつきを減らしやすくなります。

たとえば、

  • 最初に見学する業務
  • 指導者と一緒に行う業務
  • 一人で実施する前に確認する項目
  • 習熟状況を振り返るタイミング
  • 次の段階へ進むための目安

などを整理しておきます。

「1週目」「2週目」と期間だけで区切るのではなく、本人の経験や習熟状況を確認しながら進めることも大切です。

一人ひとりの進み方には違いがあるため、一定期間で必ず独り立ちできるという前提ではなく、現在の到達度を確認しながら担当範囲を広げていきます。

③ 院内だけで難しい部分は外部研修も活用する

すべての教育を院内だけで行おうとすると、指導できるスタッフや練習時間が限られることがあります。

特に、超音波検査など実技練習が必要な業務では、必要に応じて外部研修を取り入れる方法もあります。

SASHIでは、医療機関向けに超音波検査の実技研修を行っています。

受講するスタッフの経験や現在の技術レベル、施設で必要とされている検査内容を確認し、その課題に合わせて研修内容を組み立てます。

外部研修を利用したからといって、短期間で即戦力になることを保証するものではありません。

院外で実技を確認し、その後も院内で経験や練習を重ねていくことで、施設で担当できる業務を少しずつ広げていくことを目指します。

なお、従業員への職業訓練では、内容や条件によって人材開発支援助成金などを利用できる場合があります。対象となる訓練や支給要件は制度ごとに異なるため、利用を検討する場合は厚生労働省や管轄の労働局、社会保険労務士などへ最新情報をご確認ください。

「採用」と「育成」を分けずに考える

人員不足が続くと、どうしても「新しく採用すること」に意識が向きやすくなります。

もちろん採用活動は重要ですが、同時に、現在働いているスタッフや新しく入職したスタッフをどのように育てるかも重要です。

たとえば、

  • 現在いるスタッフがどこまでの業務を担当できるのか
  • 特定の人にしかできない業務がないか
  • 今後誰にどのスキルを学んでもらいたいのか
  • 院内で教えられる内容と、外部を利用したい内容は何か

を整理することで、人材育成の優先順位が見えやすくなります。

「採用できないから仕方がない」と考えるだけでなく、今いる人材をどのように活かし、育てていくかという視点を持つことも、人員体制を整える方法の一つです。

働き続けやすい環境づくりもあわせて考える

育成制度を整えることだけで、離職を防げるわけではありません。

働き続けやすさには、勤務条件、人間関係、業務量、キャリアの希望、家庭との両立など、さまざまな要因が関係します。

そのため、教育体制とあわせて、

  • 定期的に困っていることを確認する機会を設ける
  • 役割や担当業務をわかりやすくする
  • 教育担当者にも相談先を設ける
  • 業務量や勤務体制に無理がないか確認する
  • 本人が今後どのような業務を担当したいのか確認する

といった点も見直してみましょう。

大切なのは、「辞めないようにする」という一方向の考え方ではなく、スタッフが安心して業務を覚え、働き続けられる環境を施設全体で考えていくことです。

新人教育は「最初の3か月」だけで考えない

入職直後は、新しい環境や業務に慣れるための支援が特に必要な時期です。

一方で、「最初の3か月さえ乗り越えれば定着する」と一律に考えることはできません。

業務内容や経験、職種、施設によって、慣れるまでに必要な期間は異なります。

そのため、入職直後だけではなく、その後も段階的に振り返りの機会を設けることが大切です。

「何ができるようになったか」
「どこで困っているか」
「次に何を覚えたいか」

を定期的に確認することで、本人と指導側の認識を合わせやすくなります。

まとめ|病院の人員不足は、採用と育成の両方から考える

病院の人員不足に対して、採用活動だけですべてを解決することは難しい場合があります。

人材体制を考えるときは、

  • 指導担当や相談先を明確にする
  • 育成の流れを見える化する
  • 院内だけで難しい内容は外部研修も検討する
  • 入職後も継続して振り返る
  • 働き続けやすい環境もあわせて見直す

といった複数の視点から考えることが大切です。

「採用して終わり」ではなく、入職したスタッフが少しずつ業務を覚え、現場で役割を広げていける教育体制をつくることも、今後の人員体制を考えるうえでの一つの方法です。

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