訪問診療でエコーを使うとき、まず気になるのが「この検査は何点で算定できるのか」ではないでしょうか。
実際の現場では、心機能や心不全の評価で心エコーを行ったり、腹痛・腹水・胆嚢・腎泌尿器などを確認するために腹部エコーを行ったりする場面があります。
ただし、診療報酬上は「エコーを使ったら一律○点」ではありません。
まず心臓か、心臓以外かを分ける。そのうえで、心臓以外では訪問診療なのか往診なのかを確認する。
この順番で考えると、訪問診療におけるエコーの算定が分かりやすくなります。
① 心エコー
心臓超音波検査として確認します。2026年度の経胸壁心エコー法は880点です。
② 心臓以外のエコー
腹部などはこちらです。訪問診療時に行う断層撮影法は400点・月1回です。
さらに、往診時に行った場合は400点ではなく、「その他の場合」の部位別点数を確認します。
そもそも診療報酬とは?
診療報酬とは、保険診療で行う診察・検査・処置などに対して設定されている点数です。
原則として1点=10円として医療費に換算されます。
たとえば400点であれば、診療報酬上は4,000円に相当します。
ただし、患者さんがそのまま4,000円を支払うわけではなく、実際の窓口負担は保険の負担割合などによって異なります。
訪問診療のエコーは、まず「心臓か、心臓以外か」で分ける
超音波検査は、診療報酬点数表のD215「超音波検査」に定められています。
訪問診療でよく検討される検査をシンプルに見ると、まず次の2つに分けると理解しやすくなります。
| 主な検査 | 考える区分 | 2026年度の主な点数 |
|---|---|---|
| 心エコー | 心臓超音波検査 | 経胸壁心エコー法 880点 |
| 腹部など心臓以外のエコー | 断層撮影法 (心臓超音波検査を除く) |
訪問診療時 400点・月1回 |
まずこの違いを理解しておけば、「訪問先でエコーをしたから全部400点」という誤解を避けやすくなります。
心エコーは880点|訪問先でも別区分で考える
心臓超音波検査は、腹部などの断層撮影法とは別の区分です。
2026年度では、通常の経胸壁心エコー法は880点です。
経胸壁心エコー法:880点
そのため、患者さんの自宅で心エコーを行った場合も、単純に「訪問診療時の400点」と考えるわけではありません。
一方で、心臓にプローブを当てて簡単に確認しただけで、すべて経胸壁心エコー法880点として算定できるという意味でもありません。
実際にどのような検査を行ったのかを確認したうえで、該当する区分を判断します。
腹部エコーなど心臓以外は、訪問診療時なら400点
腹部など、心臓以外の断層撮影法には「訪問診療時に行った場合」という区分があります。
2026年度では、400点・月1回です。
400点/月1回
在宅では、たとえば腹部症状や腹水、腎・泌尿器、胸腔内の貯留物などを確認するためにエコーを行う場面があります。
こうした心臓以外の断層撮影法について、訪問診療時には400点の区分を確認します。
ただし、同じ患者さんについて月1回に限り算定という規定があるため、その月にすでに算定していないか確認が必要です。
ここで注意|「訪問診療」と「往診」は同じではない
腹部エコーなど心臓以外の検査では、もう一つ確認したいポイントがあります。
それが、訪問診療なのか往診なのかです。
訪問診療
計画的・定期的に患者さんのもとへ訪問して行う診療です。
往診
患者さんの求めに応じて、予定外に医師が患家等へ出向いて行う診療です。
どちらも自宅などで診療を行いますが、超音波検査の算定では同じ扱いではありません。
心臓以外のエコーを訪問診療時に行った場合は400点ですが、往診時は「その他の場合」の部位別区分を確認します。
往診時に腹部エコーをした場合は530点
往診時に心臓以外の断層撮影法を行った場合は、「訪問診療時」の400点ではなく「その他の場合」を確認します。
その中でも、訪問診療でイメージしやすいのが胸腹部です。
胸腹部:530点
たとえば腹部の臓器や腎・泌尿器領域、腹腔内・胸腔内の貯留物などを対象とする検査では、この胸腹部の区分を確認します。
つまり腹部エコーを例にすると、
- 訪問診療時:400点・月1回
- 往診時:胸腹部530点
という違いがあります。
同じ患者さんの自宅で腹部エコーをしても、診療形態によって算定区分が変わるということです。
下肢血管やその他の部位を調べた場合は?
ここまでで、訪問診療で特にイメージしやすい心エコーと腹部エコーを見てきました。
ただし、必要に応じて下肢血管や頸部、四肢、体表などをエコーで確認する場合もあります。
往診時など「その他の場合」では、部位によって次のように区分されています。
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| 胸腹部 | 530点 |
| 下肢血管 | 450点 |
| その他 (頭頸部・四肢・体表・末梢血管など) |
350点 |
つまり、下肢血管450点は訪問診療の説明で最初に覚える項目というより、腹部以外の検査を行ったときに確認する部位別区分の一つと考えると分かりやすいでしょう。
腹部エコーは「腹部を見た」で終わらず、領域も確認する
胸腹部の断層撮影法については、実際にどの領域を検査したのかを確認します。
2026年度の取扱いでは、
- 消化器領域
- 腎・泌尿器領域
- 女性生殖器領域
- 血管領域(大動脈・大静脈など)
- 腹腔内・胸腔内の貯留物等
- その他
といった領域が示されています。
たとえば、膀胱を評価した場合は腎・泌尿器領域として確認します。
「ポータブルエコーを使った」ということではなく、実際に何を検査したのかが大切です。
算定するなら、画像と所見の記録も忘れない
エコーの診療報酬は、点数だけ確認すればよいわけではありません。
検査結果について、診療録上の記録も確認する必要があります。
具体的には、
- 検査で得られた画像を診療録へ添付する
- 主な所見を診療録へ記載する
- 必要に応じて測定値や性状等を記載した文書を添付する
- 医師以外が検査を行った場合に必要な医師確認の記録を残す
といった点です。
「エコーを使ったから算定する」ではなく、実施した検査内容と画像・所見の記録まで確認することが大切です。
迷ったときは「心臓→腹部→その他」の順に考えると分かりやすい
訪問診療でエコーの算定について聞かれたときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
① 心エコー?
心臓超音波検査として確認します。経胸壁心エコー法は880点です。
② 腹部など心臓以外?
訪問診療時であれば、心臓以外の断層撮影法400点・月1回を確認します。
③ それは訪問診療?往診?
往診時であれば400点ではなく、「その他の場合」の部位別区分を確認します。
④ 腹部以外の部位?
下肢血管や頭頸部・四肢・体表などであれば、それぞれ該当する区分を確認します。
⑤ 画像・所見は記録されている?
実施した検査内容とあわせて診療録上の記録も確認します。
訪問診療のエコー算定についてよくある質問
Q1.訪問診療で腹部エコーをした場合は何点ですか?
心臓以外の断層撮影法を訪問診療時に行った場合は、2026年度では400点・月1回です。
Q2.訪問診療で心エコーをした場合も400点ですか?
いいえ。心臓超音波検査は別区分です。
2026年度の経胸壁心エコー法は880点です。
Q3.往診で腹部エコーをした場合は何点ですか?
往診時は「訪問診療時」の400点ではなく、「その他の場合」を確認します。
胸腹部の断層撮影法は530点です。
Q4.下肢血管エコーは何点ですか?
「その他の場合」の下肢血管は450点です。
訪問診療時に行った心臓以外の断層撮影法については、別途400点・月1回の区分があります。
Q5.エコーをすれば必ず算定できますか?
単にプローブを当てたというだけで判断するのではなく、実際にどの検査を行ったのか、該当する算定区分や記録要件を確認する必要があります。
まとめ|まず心臓と腹部を押さえると、訪問診療のエコー算定は理解しやすい
訪問診療でエコーの診療報酬を考えるとき、最初からすべての部位別点数を覚える必要はありません。
まずは、実際に使う機会をイメージしやすい心エコーと腹部エコーから整理すると分かりやすくなります。
- 心エコー:経胸壁心エコー法880点
- 腹部など心臓以外を訪問診療時に実施:400点・月1回
- 往診時の胸腹部:530点
そのうえで、下肢血管やその他の部位を検査したときに、該当する部位別区分を確認します。
「エコーは何点?」ではなく、「心臓か、心臓以外か。訪問診療か、往診か。何を検査したのか。」
この順番で考えると、制度を知らない人にも説明しやすくなります。
※本記事は2026年10月時点の令和8年度診療報酬制度をもとに作成しています。診療報酬、通知、疑義解釈等は更新・訂正される場合があります。実際の算定・請求時には、厚生労働省の最新の診療報酬点数表、通知、疑義解釈等をご確認ください。
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