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アーチファクトとは
アーチファクト(artifact)とは、
超音波検査において
実際には存在しない構造や歪みが、画像として表示される現象を指します。
日本語では、
「虚像」「偽像」「歪み」などと表現されます。
もともと artifact という言葉は、
「人工物」「人為的産物」を意味し、
画像診断の分野では
信号処理上の誤差や歪みを指す用語として使われています。
超音波診断では、
- 本来存在しない病変があるように見える
- 実在する構造が、違った位置や形で表示される
といった形で現れます。
超音波検査におけるアーチファクトの重要性
アーチファクトは、
誤診や所見の見落としにつながる原因となる一方で、
診断の手がかりになる場合もあるという重要な側面を持っています。
そのため超音波検査では、
- アーチファクトを「見抜く力」
- アーチファクトを「利用する知識」
の両方が求められます。
アーチファクトが発生する原理
アーチファクトは主に、
以下の要因によって発生します。
- 超音波の物理的特性
- 生体内での反射・屈折・減衰
- 装置が前提としている条件
- プローブ操作や装置設定
超音波装置は、
「超音波は直進し、一定の音速で往復する」
という前提で画像を作成しています。
この前提が成り立たない状況では、
画像上に誤差として
アーチファクトが生じます。
代表的な超音波アーチファクトの種類
サイドローブアーチファクト
超音波ビームには、
中心となるメインローブ(主極)のほかに、
音圧の低いサイドローブ(副極)が存在します。
サイドローブに当たった反射波が
メインローブからの信号として処理されることで、
実際には存在しない位置にエコーが描出される現象です。
グレーティングローブアーチファクト
アレイプローブで電子偏向
(ビームスラント)を行った際、
振動子間の干渉によって
意図しない方向にローブが形成されます。
このローブからの反射が
本来の位置に表示されることで、
虚像が生じます。
多重反射(Multi reflection)
平行に向かい合った強い反射体の間で、
超音波が何度も反射を繰り返すことで発生します。
特徴として、
- 発生源の後方に
- 等間隔で
- 複数のエコーが並ぶ
という像が描出されます。
彗星の尾のような像を呈する
コメットテイルエコーも、
多重反射によるアーチファクトの一種です。
ミラーイメージ(鏡面反射)
横隔膜などの強い反射体が存在する場合、
その反射体を挟んで
鏡に映したような像が出現します。
実際には存在しない構造が、
反射体の反対側に描出されるのが特徴です。
音響陰影と後方エコー増強
音響陰影(Acoustic shadow):
骨や結石など、
超音波を強く反射する構造の後方に
無エコー域が生じます。
後方エコー増強:
液体など減衰の少ない構造の後方で、
エコーが相対的に強調されます。
どちらも、
病変の性状評価に有用なアーチファクトです。
屈折によるアーチファクト
音速の異なる組織境界に
斜めに超音波が入射すると、
ビームが屈折します。
その結果、
- 構造物が左右にずれて表示される
- 二重像が出現する
- ビームが届かない領域が生じる
といった現象が起こります。
アーチファクトを理解する意義
アーチファクトの原理を理解することで、
- 虚像を病変と誤認しない
- 画像の歪みを補正できる
- プローブ操作や装置設定を適切に調整できる
ようになります。
さらに、
音響陰影や後方エコー増強、
コメットテイルなどは、
存在診断や鑑別診断に役立つ
重要な情報を与えてくれる場合もあります。
まとめ
アーチファクトとは、
超音波検査において生じる
虚像・歪み・偽像の総称です。
検査の妨げになることもありますが、
正しく理解すれば
診断を助ける有用な情報源にもなります。
超音波検査を行う技術者にとって、
アーチファクトの理解は
必須の基礎知識と言えます。











