救急で“役に立たない自分”を変えたい研修医へ|エコーが武器になる3つの理由

公開: 更新: 約10分

「救急でエコーを使えるようになりたいけれど、何から練習すればいいのか分からない」

「上級医がエコーを使っているのを見るけれど、自分でプローブを持つと断面が出せない」

研修医として救急診療に関わる中で、POCUS(Point-of-Care Ultrasound)を学びたいと感じる場面もあると思います。

救急でのエコーは、ただ「画像を出せるようになる」ことが目的ではありません。

目の前の患者さんについて何を確認したいのかを考え、その臨床上の疑問に対して必要な情報を得るために使うことが基本です。

この記事では、研修医が救急でエコーを学ぶときに考えたいことと、実技練習の進め方を解説します。

救急でエコーを学ぶなら、「何を見るか」より「何を知りたいか」から

エコーを学び始めると、「心臓を描出できるようになりたい」「FASTを覚えたい」と、まず断面や手技に目が向きやすくなります。

もちろん基本断面を描出できることは大切です。

ただ、救急でPOCUSを使うときは、その前に「この患者さんについて何を確認したいのか」という臨床上の問いがあります。

例えば、

  • 外傷患者で体腔内の液体貯留を評価したい
  • 呼吸困難の患者で肺や心臓を評価したい
  • 循環不全の患者で心臓の動きや血行動態を考える材料がほしい
  • 処置を行うときに超音波で位置を確認したい

など、目的によって観察する部位や走査方法は変わります。

救急エコーは「何でも診断するための検査」ではなく、臨床状況に応じて必要な情報をベッドサイドで確認するための一つの手段として考えることが大切です。

研修医が最初に整理したい「救急でエコーを使いたい場面」

エコーを学び始める前に、自分がどの場面で使えるようになりたいのかを考えてみましょう。

救急領域では、POCUSにはさまざまな使い方があります。

例えばこんな場面があります
  • 外傷患者に対するFAST・eFAST
  • 心臓の基本的な観察
  • 肺・胸腔の観察
  • 腹部大動脈の評価
  • 胆道・尿路などの評価
  • 血管確保などの処置ガイド

最初からすべてを学ぶ必要はありません。

自分の研修環境や救急外来で経験する症例、指導体制を確認しながら、よく使うものから練習していく方法があります。

FASTは「腹部を全部見るエコー」ではない

救急エコーを学ぶとき、FASTから触れる方も多いでしょう。

FASTは、外傷患者に対して腹腔内や心嚢などの液体貯留を迅速に評価するために行うfocusedな超音波検査です。

eFASTでは、胸腔や気胸の評価も加わります。

ここで大切なのは、通常の腹部エコーと同じようにすべての臓器を詳しく観察する検査ではないということです。

「何を見る検査なのか」「どこを観察するのか」「どのような状況で使うのか」を理解したうえで基本断面を練習します。

心エコーも、まず基本断面を安定して出すところから

救急では心臓をエコーで観察する場面もあります。

ただし、最初から細かな計測や高度な評価まで行おうとする必要はありません。

まずは、

  • どこにプローブを置くのか
  • マーカーをどちらへ向けるのか
  • 基本断面をどのように描出するのか
  • プローブを動かすと画像がどう変わるのか

を理解し、正常例で基本的な描出を繰り返します。

基本断面が安定してくると、臨床でどこを観察しているのかも理解しやすくなります。

肺エコーは「見える・見えない」だけで覚えない

肺や胸膜を観察する場合も、所見の名前だけを暗記するのではなく、どの位置にプローブを当て、何を観察しているのかを理解することが大切です。

例えば、

  • 胸膜ラインをどこで確認するのか
  • lung slidingをどのように観察するのか
  • B-lineをどう認識するのか
  • 患者さんの体位によってどこを観察するのか

など、走査方法と所見を結びつけて学びます。

単一のエコー所見だけで判断を完結させるのではなく、病歴、身体所見、バイタルサイン、その他の検査結果と合わせて評価していくことが重要です。

救急エコーの練習では、プローブ操作を分解する

研修医の方からよく聞くのが、「見本では簡単そうなのに、自分でやると画像が出ない」という悩みです。

この場合、「センスがない」と考える必要はありません。

エコーは、プローブのわずかな動きで画像が変わる実技です。

目的の断面が出ないときは、操作を一つずつ分けて確認してみましょう。

確認したいプローブ操作
  • プローブを置く位置
  • マーカーの向き
  • 傾ける角度
  • 回転
  • スライドする方向
  • 圧のかけ方
  • 患者さんの体位

位置と角度と回転を一度に変えると、「何を変えたから見えたのか」が分かりにくくなります。

一つずつ操作して画像の変化を見ることが、再現できる走査につながります。

一度見えたら終わりではなく、もう一度描出してみる

実技練習で目的の断面が一度出ると、「できた」と感じると思います。

そこで、もう一度同じ断面を描出してみましょう。

一度プローブを外して、

  • どこに置いたのか
  • どの方向へ向けたのか
  • どの程度傾けたのか
  • どこから画像が見え始めたのか

を思い出しながら、もう一度操作します。

「一度見えた」から「もう一度出せる」へ進むことが、実技練習では重要です。

画像だけでなく、プローブをどう動かしたか振り返る

エコーを学んでいると、画面ばかりを見てしまいがちです。

しかし、画像が出なかった理由は画面の中だけにあるとは限りません。

例えば、

  • 肋間にうまく入っていなかった
  • プローブの位置が少しずれていた
  • 角度をつけすぎていた
  • 手首だけで操作していた
  • 患者さんの体位を変えていなかった

など、手元に原因があることもあります。

指導を受けるときは、画像だけではなく、自分のプローブの位置や動かし方も見てもらうと、つまずきを確認しやすくなります。

救急エコーは「所見を覚える」だけでは身につきにくい

POCUSの勉強では、画像や動画を見ることも重要です。

ただし、実際の診療でエコーを使うには、自分でプローブを操作して目的の断面を描出する必要があります。

そのため、

  1. 何を確認したいのかを考える
    目の前の臨床状況で、エコーからどのような情報を得たいのかを整理します。
  2. 必要な基本断面を知る
    FAST、心臓、肺など、目的に応じた走査方法を学びます。
  3. 正常例でプローブを動かす
    位置・角度・回転と画像の変化を確認します。
  4. 同じ断面を繰り返す
    一度出せた断面を、自分でもう一度描出してみます。
  5. 指導者と画像・操作を確認する
    見えているものだけでなく、プローブ操作や考え方についてもフィードバックを受けます。
  6. 臨床で症例を経験する
    指導を受けながら、正常例だけではないさまざまな症例へ経験を広げていきます。

「判断できるようになる」より、得られた情報を診療につなげる

エコーを学ぶ目的を「自分一人で判断できるようになること」にしてしまうと、POCUSの役割を大きく捉えすぎてしまうことがあります。

救急診療では、病歴、身体所見、バイタルサイン、血液検査、画像検査など、さまざまな情報を組み合わせて考えます。

POCUSで得られた情報も、その中の一つです。

研修医の段階では、

  • 何を目的に走査したのか
  • どの断面を描出したのか
  • 何が見えたのか
  • 自分では判断しにくいところはどこか

を整理し、必要に応じて上級医と画像を確認することも大切な学びになります。

職場でプローブを持つ時間が少ないなら、実技練習の場をつくる

救急外来が忙しいと、研修中にゆっくりプローブ操作を確認する時間を取りにくいことがあります。

「症例は見たけれど、自分ではほとんど触れなかった」ということもあるでしょう。

その場合は、診療中だけですべてを練習しようとせず、正常例で基本操作を繰り返せる実技研修を活用する方法もあります。

実技研修では、

  • プローブを置く位置
  • 基本断面
  • 装置設定
  • 操作の癖
  • 安定しない断面

などを、臨床とは別の環境で確認できます。

そのうえで、臨床現場では指導医のもとで実際の症例を経験し、学んだ操作と結びつけていきます。

研修医としてエコーを学び始めたい方へ

SASHI合同会社では、医師・研修医の方にもマンツーマンの超音波検査実技レッスンを行っています。

「救急でFASTを使う機会があるけれど、基本断面が安定しない」

「心エコーを自分でも描出できるよう練習したい」

「上級医の走査を見ているだけでは、プローブの動かし方が分からない」

といった場合に、現在の経験や練習したい内容に合わせて実技を組み立てます。

マンツーマンなので、実際にプローブを持ちながら、位置・角度・回転・圧・基本断面などを一つずつ確認できます。

救急で使うエコーを、実際にプローブを持って練習したい方へ

FAST、心臓など、今確認したい内容に合わせて基本操作を練習できます。

一度見えた断面をもう一度描出する、うまくいかない操作を繰り返すなど、自分の課題に時間を使えるマンツーマン形式です。

救急で使うエコーを実技で練習する

まとめ|救急エコーは「何を見るか」ではなく「何を確認したいか」から学ぶ

救急でエコーを学ぶとき、最初からすべての断面や所見を覚えようとする必要はありません。

まずは、

  • どのような場面でエコーを使いたいのか
  • その場面で何を確認したいのか
  • そのためにどの基本断面が必要なのか
  • 今どの操作で迷っているのか

を整理してみましょう。

そこから正常例で基本断面を練習し、同じ画像を繰り返し描出できるようプローブ操作を確認していきます。

そして臨床では、得られたエコー所見だけで完結させるのではなく、患者さんの症状や身体所見、ほかの検査結果と合わせて考えていきます。

「救急で役に立つためにエコーを覚える」のではなく、目の前の患者さんを評価するときに必要な情報を得るための一つの手段として、エコーを学ぶ。

そのための基本操作を、一つずつ身につけていきましょう。

※POCUSの実施・解釈は、各施設の診療体制や指導体制、研修内容等に従って行ってください。実技研修は臨床判断や指導医による教育の代わりになるものではありません。



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