ゲインとは
ゲインは、超音波診断装置における基本的な画像調整機能の一つで、
体内で反射して戻ってきたエコー信号(電圧)を全体的に増幅し、
画面全体の明るさやコントラストを調整する操作です。
ステレオのボリューム調整に例えられることが多く、
非常に微弱な反射信号(およそ10⁻⁵~10⁻³V程度)を
数十万〜100万倍以上に増幅して可視化します。
原理(しくみ)
体内で反射したエコー信号は非常に弱いため、
装置内部でアンプ(増幅回路)を用いて増幅されます。
一般的には、ログアンプによる信号処理を経た後、
ゲインによって表示信号の全体的な強さが調整されます。
ゲインを上げると弱い信号まで強調され、
画面は白っぽくなります。
一方、ゲインを下げると強い反射信号のみが残り、
画面は暗くなります。
適切なゲイン設定を行うことで、
正常組織と病変とのコントラストが最も見やすい状態になります。
特徴(メリット)
リアルタイムで調整でき、
患者の体格や検査部位に応じて
最適な画像を即座に作成できます。
低ゲインではノイズを抑制でき、
高ゲインでは微細な反射信号を強調できるため、
検査目的に応じた柔軟な調整が可能です。
Bモードやドプラモードなど、
すべての超音波モードに共通する
基本的かつ必須の調整項目です。
自動ゲイン制御(AGC)を搭載した装置では、
初心者でも一定レベルの画像品質を
得やすいという利点があります。
検査での使われ方
検査開始時には、
まず全体ゲインを標準的な設定に合わせます。
その後、肝臓などの正常実質臓器が
「適度な中間灰色調」に見えるよう
微調整を行います。
脂肪肝(高エコー)や嚢胞(無エコー)など、
病変と正常組織のコントラストが
最も明確になるゲイン値を探します。
機種によってはメモリー機能を用いて設定を保存し、
複数の患者で同条件を再現することも可能です。
注意点と限界
ゲインを上げ過ぎると、
ノイズが増加し、
組織間のコントラストが低下します。
その結果、白飛びが生じたり、
偽陽性の病変を疑ってしまう原因になります。
逆に、ゲインを下げ過ぎると、
微小病変の見逃しや、
心腔内・血管内構造が識別できなくなるなど、
情報欠落が生じます。
また、TGC(深さ方向のゲイン補正)と併用しない場合、
深部臓器の描出が不十分になることがあります。
ゲインの数値目盛りは機種間で異なるため、
数値に依存せず、
画面の見え方を基準に判断することが重要です。
適正ゲインの目安
心腔内・血管内:
無エコーで、真っ黒に描出される状態。
心筋・肝実質:
ムラのない、均一な中間灰色調。
骨・石灰化:
輪郭が明瞭な高エコー(白)として描出。
組織の境界:
境界線がにじまず、
クリアに識別できる状態。
「暗すぎず、明るすぎず、
正常構造が自然な階調で描かれる」
ことを目標とします。
臨床での応用例
腹部超音波検査:
脂肪肝における高エコーの強調や、
深部にある膵臓の描出改善。
心エコー検査:
心内膜と心筋の境界を明瞭にし、
血流画像とのコントラストを最適化。
血管エコー:
内膜の微細なプラーク検出や、
血栓の高エコー所見の確認。
ゲイン調整は、
画像診断における「最初の関門」であり、
すべての超音波検査の品質を左右する重要な操作です。
ゲインとSTC
STC(=TGC:Time Gain Compensation)は、
深さ方向ごとにゲインを補正する機能です。
全体を一括で調整する「ゲイン」に対し、
STCは
「浅部・中間部・深部」と
深さ別に信号増幅を調整します。
適切なゲインとSTCを組み合わせることで、
浅部から深部まで
均一で診断しやすい画像が得られます。












